第13話 レオンハルトの告白
「もう歩けるの? 無理してない?」
「あぁ、問題ない」
森に結界を貼ったあと、私がレオンハルトを担いで馬車まで連れていった。
そのあとは新国家まで戻り、私がい看病をしていたのだが、さすが剣士というだけあって、2日で回復してくれた。
「レレーナの魔法は凄いな。流石の俺でもあの毒では助からなかったはずだぞ」
「そ、そう……」
どうも調子が狂ってしまう。
今までのレオンハルトだったらこんなに褒めてくれることなんてなかった。
相変わらずの自信過剰ナルシストのようなことも言っているが……。
「おい、どこへ行くんだ?」
「治ったなら私の看病はおしまいでいいでしょ? まだまだ国を創るための作業がいっぱいあるんだから」
結界の拡張、それから収納魔法から収資材を所定の場所に出していく作業、他にもお父様と打ち合わせをしたりとにかく忙しい。
だが私の命を守ってくれたレオンハルトだし、目が覚めるまでは看病すると決めていた。
たとえ今まで嫌いだった相手だとしてもだ。
私は立ち上がって部屋を出て行こうとした。
「なんで俺の元からすぐに消えようとするんだ?」
「忙しいんだって」
「そんなに俺のことが嫌いなのか? 何かレレーナにしたか?」
再びレオンハルトの方を振り向いて思い切り睨みつけた。
助けてくれたことには感謝するが、それ以上に許せないこともある。
「女垂らし剣士!! 気軽に色んな女の子とやりまくる男って、私が一番大っ嫌いな存在なのよ!」
しまった……。
つい感情的になってしまって本音を言いすぎた。
流石のレオンハルトも顔を落とす。
「あぁ……、否定はしない。俺は蜜館でもその辺の女相手にも声をかけては夜を過ごしてきたのだからな」
「ほんっっっとうに嫌い!! どっかの殿下と変わらないわよ!」
「否定はしない……」
おかしい。
本音を言うだけ言ったので、その後は昔みたいにすぐ反論してくるかと思ったが、アッサリと認めてしまった。
調子が狂ってしまう。
「レレーナ、俺は宣言する。今後誰とも抱かないし夜を過ごすこともしない!!」
「へぇ……」
「レレーナを除く女は絶対にだ!!」
「はあああぁぁぁぁーーー!?」
更に調子が狂ってしまった。
レオンハルトが何を考えているのか全く理解できない。
「アンタ何言ってるか分かってんの!?」
「当たり前だ。俺は本気だ」
今度は幼馴染である私と夜を過ごしたいからそう言っている……。
いや、レオンハルトの性格だと嘘はつかないはずだ。
そう考えたら一瞬だけドキリとしてしまったが、すぐに正気に戻った。
「それがアンタの口説き文句? そうやってアンタの容姿と口車で一体何十人の女の子を……」
「いや、違う。100は軽く超えている」
「余計にタチが悪い!!!!」
さっき一瞬でもドキッとした自分が恥ずかしくなってきた。
こんな馬鹿正直な男のどこがいいんだか!
顔か……。
だが、私とレオンハルトは幼馴染だ。
外見だけでホイホイと身体を許したりしない!
「森に一緒に行ったとき、俺は誓った。もうレレーナ以外の女とは関係を持たないと。俺はレレーナだけを見ていきたいと!」
「ちょっと……、なんで急にそんなこと思うのよ」
「急ではない。昔からずっとだが」
「はい!?」
レオンハルトの目が本気(マジ)になっている。
「昔っていつから!?」
「6歳くらいだったか……」
「嘘でしょ!?」
「俺は嘘はつかない」
全く気が付かなかった。
私は聖女から魔女に昇格するための日々の鍛錬で忙しかったのもあったけど。
「レレーナは一生懸命だった。だから俺も応援したくてそっとしておいた。それがいけなかったんだ」
「どういうこと……?」
「気がついた時にはレレーナは国の王子と婚約をしてしまった。俺は自分で自分が許せなくて、何度も口を噛みしめて血も流していたな。荒れてた俺はなんとか起死回生しようとレレーナのことを忘れる努力をした。それが蜜館や他の女達だった。だが、全くダメなんだ。いずれレレーナよりも素敵な女と出逢うと思っていたが……結局最終的にはこうしてお前がここにいる」
「……」
「レレーナの代わりなどいないんだ。俺はそんなことも気が付かずに今まで色んな女を抱いてしまっていた。俺は本当は心の弱い騎士なんだ」
私はため息を吐いて呆れてしまった。
自分に対して呆れていたのだ。
どうして気が付かなかったのかと。
「で……、どうだったの? 久しぶりに再会して私を抱えて運んだときの感想は」
私ってばやっぱりダメだ。
本心で聞きたいことを聞くことができない。
どうでもいいことを何気なく喋ってしまった。
レオンハルトが真っ当に全部しゃべってくれたのにこれでは失礼だ。
「思いの外、重かった」
「あ“ぁ!?」
前言撤回。
目の前にいる口説き男の方が失礼だ!
馬鹿正直すぎる!
「何度も言うが、運ぶために抱っこはしたが、手は出していない。レレーナの顔を見れただけで満足だったのだからな」
「そう」
「レレーナ!」
「何?」
「俺と一緒にいてほしい。これから先ずっとだ。好きなんだ」
最後の一言が私の心に響いてしまった。
だが、私は素直になれなかった。
「そう……。好きにすれば?」
「あぁ、大好きだ」
過去がどうだったとかはこの際どうでもいい。
幼馴染のレオンハルトが私のことを『好き』と言ってくれた一言が嬉しかった。
今までの怒りや恨んでいたことも一気に吹っ飛んでしまうくらいの言葉だったのだ。
「レレーナ、しばらく手を握っていてくれないか?」
「なんで?」
「胸が苦しいんだ……」
そんなこと言われてしまったら、断る方が難しい。
嫌々そうな表情をしながら手を握ってあげた。
「はいはい……」
本当は、私はとても喜んでいた。
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