第11話【視点】ばっかもん

「ぶぁっかもーーーーーーん!!!!」

「どふううぅぅええええぇぇぇ!!?」


 父上ことキャルム陛下が王宮へ帰ってきた。

 褒められると思っていたので、父上がいる王宮の中庭まで走っていき出迎えた。


 そしたら、いきなりビンタが飛んできたのだ。

 王宮に仕える兵士や部下がいる前だというのに酷いではないか。


「ドックスよ!! 私が出張中になぜこんなに世界が変わっているのだ!? 何をやらかした!?」

「まずはお聞きください!! 無力聖女のレレーナに婚約破棄を言い渡し、国から追放させましたー」


 私はこれさえ報告しておけば、建物が消えたことに関しても説明がつくと思って真っ先に言うことにした。

 しかし、父上の機嫌が更にエスカレートして、激怒させてしまったように見える。

 同時に、更に重いグーパンチが飛んできて、ヒリヒリしている側の頬に直撃した。


「ぐふううぅぅええええぇぇぇ!!」


「何をバカなことをしているのだ貴様は! レレーナ様ほどの聖女とようやく婚約できるようにしたというのに、勝手に婚約破棄しただと……!? どこまでやらかせば気が済むのだ!?」


 怒声は私の耳に入って、すぐに反対側の耳から抜けていった。

 もはや頬の痛みに加え、口の中が鉄の味がしていて、聞いていられる状況ではない。


「レレーナ様を追放したということは、ダイン殿も一緒に……ならばこの状況も外に現れた街並みも納得できるが……」

「でしょう!? 全く身勝手な奴らですよね。とっとと邪魔者を排除できたし、これから国の再建を頑張っていきましょう父上」


 必死に弁解を試みる。

 これ以上体罰が飛んできたら、たまったものじゃないからな。


「誰が再建をすると言っている?」

「もちろん父上です! 私も協力してあげるので頑張りましょう!!」


 今度はジャンアイントスイングをかましてきた。

 元気な父上だからこそ困る。

 見ている周りの人間の目線も痛いし大恥だ。


 おまけに目が回ってしまい、口の中全体に鉄の味が染み渡って吐きそうである。


「ふぅ……ふぅ……。貴様のやらかした後始末を全て私がやれと申すか! 国で一番重要なダイン殿までいなくなったらどうしようもできないだろう!」


「何を仰いますか……たかが聖女の親一人失ったくらいでビービー言わないでくださいよ」

「あの者が国の半分近くもの金額を納税してくれていたのだぞ。おまけに融資もあったおかげで成り立っていたようなものだ」


 父上が激怒しているが、要は今後は一年の半分程度の税しか入らないというわけだろう。

 この状況でそんなことで怒っている父上のことが理解できなかった。


「たとえ税が半分になったとしても、国の規模が半分くらいになっているのですから結果的に同じことでしょう!」

「もはやお前には任せられんな……。すぐにでも新たな後継者を作るしか方法はあるまい……」


 それは非常にまずい。

 褒められると思ってやった行動だというのに、何故こんなにも怒鳴ってくるのだ。

 まさか出張中に頭でもおかしくなってしまったのではあるまいか。


「私は次期国王として国をまとめ上げるためにここまでやってきたのですよ!」


 痛みと吐き気を我慢しながら必死になって喰らいつく。

 しかし、父上の表情は未だに怒っている。


「無理だ。今のお前が国を仕切ることなど……むしろ崩壊させてしまうだろう。この際後継者を信頼のおける血縁が薄い者に任せてしまっても良いくらいだ」


 キャルムはそういう。

 この言葉を聞いて、私は父上とは思わず、ただの憎い邪魔者と思うようになった。

 早く帰ってきてほしいと願っていたが、今となってはなんで帰ってきたんだコイツはと思っている。


 とにかく後継者が別のものに決まる前にとっとと消すのが望ましい。

 どうやって抹殺すればバレずに済むだろうか。

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