第10話 毒からの生還
「くそう……俺としたことが……油断してしまった」
「まさか……毒!?」
モンスターは強いだけでなく何かしらの特性を持つものが多いと聞いたことがある。
悪臭が毒だとすれば、間近にいるレオンハルトはただでは済まない。
私は息を止めながらレオンハルトの元へと駆け寄る。
「バカ……お前まで巻き込まれるな!」
「いいから」
私の体に残っている酸素を減らすわけにはいかないので発言は最小限にしておく。
フラフラ状態のレオンハルトを担いですぐに毒が回らないくらいの場所まで離れた。
「はぁ……はぁ……剣士なのに油断するなんて」
「……」
ふとレオンハルトの方を見たらすでに意識を失っていた。
「ちょっと!! レオンハルト!! 起きなさいよ」
「……」
必死に声をかけるものの、全くもって反応がない。
すぐに地面に寝かせて状態を見る。
「まさか……毒がこんなに早く……」
慌てて覚えている魔法を発動させた。
『GEDOKU!』
すぐに私自身にも同時に、解毒魔法を詠唱した。
人に向けて放つのはこれが初めてなのでうまくいくかはわからない。
だが、うまくいってくれないと困る。
いくら嫌いな相手とは言っても、こんなところで死なせるものか。
絶対に治したい。
「もしも一度でダメなら何度でも……」
二度目の治癒魔法を発動させようかというとき、レオンハルトの目がゆっくりと開いた。
「う……」
「起きた!? 大丈夫!? 異常はない!?」
「強いていえば、お前が俺に対して必死な顔をしていることが異常だ」
「そーですか!」
憎み口を言えるくらいだし、どうやら大丈夫そうだ。
解毒できたようで、ゆっくりと起き上がった。
私は文句を言いながらもホッとして、安堵のため息をはいた。
「レレーナ!」
「え?」
幼馴染のレオンハルトは私のことを名前で呼ぶことなど滅多にない。
いきなり真剣な眼差しで呼ばれたものだからドキッとしてしまった。
「ありがとう」
イケメンの顔から、優しそうな笑顔を見た。
この瞬間、レオンハルトの印象が少しばかり変わった気がしたのである。
何故お父様がこの男のことを気に入っているのか、ほんの少しだけ理解してしまった。
レオンハルトの毒も治り、元気を取り戻したので森の奥へと進んでいく。
再びレオンハルトは私の手を握ってきた。
「やはり俺はレレーナを守りたい。今だけでいいから俺から離れないでもらいたいんだ」
「……分かったわよ」
不思議と、先ほどとは違い嫌な感情が消えていた。
実際に助けたのは私なのかもしれないが、もしも一人で森に進んでいたとして先ほどのモンスターと対面していたら、毒を喰らったのは私かもしれない。
結果的に私が助けられたのだ。
「嫌がらないんだな」
「別に……!」
本当は『助けてくれてありがとう』と言いたいのに。
どうしてこんなに冷めた態度になってしまうのだろう……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。