第9話 モンスターと遭遇した

「はぁ……まさかレオンハルトと行動することになるなんて……」

「まぁそう言うな。お前のことはモンスターからしっかり守ってやるよ」


 言っていることはカッコいいのだが、どうしても軽い男というレッテルが抜けないので軽蔑してしまっている。


 馬車に揺られながら結界の外側の森へと向かっている。


 結界の出入り口は、モンスターだけでなく人も出入りが出来ない。

 だが、少しだけ魔力を入れることでわずかな時間だけ、その魔力を通した場所だけ出入りが可能になるのだ。


「お前の魔法はモンスターの討伐に使えそうなものもあるのか?」

「あるけど、アンタが守ってくれるって言ったばかりでしょう?」

「そうだな。だが、いくら俺でも絶対という保証はない。もしもの時は俺を放置して逃げるんだぞ?」


 いや、それは言い過ぎだろう。

 嫌いな相手とはいえ、彼の実力はご存知なのだから。

 この辺りのモンスターに負けるようなことにはならないはずだ。


「アンタのことは嫌いよ。でも幼馴染だし無駄に死なれても困るから、しっかりと回復魔法をかけてあげるわよ」

「そうか。それは心強いな」


 笑顔で言ってくれているが、そうならないでいただきたい。


 馬車は森の中へと入っていく。

 長年の間放置されているだけあって、これ以上先には馬では進めそうにない。

 一旦ここまでの範囲に結界を張り直して安全にさせた。


「ここから先は歩いていきますので、御者さんはここで待機していてください。すでに結界の中なので安全ですから」

「承知しました。レレーナ様もレオンハルト様もお気をつけて」


 結界の外に出て二人で進んでいく。

 すると、早速レオンハルトは頼んでもいないのに私の手を握ってきた。


「なんのつもり? 誰もいないからって変なことでも考えているの?」

「俺はお前を守ると決めている。何かあってからでは遅いからな。絶対に俺から離れるなよ」

「別に手を繋がなくてもいいと思うんだけど……」

「そうか……すまない」


 レオンハルトは握ってきた手を離した。

 あれ……、意外と素直だ。

 私が悪者みたいになってしまっている空気感がいたたまれない気持ちになる。


 少しばかり進むと、人生で初めてのモンスターと呼べる生き物に遭遇した。

 体長は大人二人分くらいで、体当たりでもされたらひとたまりもなさそうなイメージだ。

 レオンハルトは持っていた剣をすぐに抜き戦闘態勢に入る。


「見たこともないタイプのモンスターだな。レレーナはそこで動くなよ」


 さすが国一番の剣士だ。

 常人では出来そうにないスピードでモンスターに突っ込んでいき、あっという間に剣で真っ二つにした。

 しかし、何か私は嫌な予感がしてしまったのである。


 モンスターが真っ二つになった後、悪臭が酷いのだ。

「しまった……レレーナ! すぐにこの場から離れろ。逃げろ!」

「え!?」


 倒して勝利をしたはずのレオンハルトは今にも死にそうな表情で顔色が真っ青になっていた。

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