第8話 幼女化の理由

 病院からの帰り道、お姉ちゃんは元気になっていた。自転車を回収して帰路に着く。


「お姉ちゃんは殺されると思ったことはある?」


 わたしはここ数日の胸騒ぎをぶつけたのだ。


「この幼女化は、思いつく理由は一つだけよ」


 お姉ちゃんは、まだ、わたしの生まれる前の話を語りだした。


「わたしはある村の生贄にされかけたの」


 わたしに語る口調は何時ものお姉ちゃんらしくなく。真剣であった。


「何でも『鳥の使い』呼ばれる神様の使いが幼女を食べたいらしいの。幼い頃にわたしが候補に上がり、両親と一緒に村から逃げたわ。完結に言うとこんな感じ」


 それで謎の幼女化の説明がつく。お姉ちゃんは再び生贄の候補に上がったのだ。


「それで、お姉ちゃんはどうするの?」

「そうね、この体は長く持たない、村に行って、この呪いを解くしかないわ」


 わたしがふさぎ込んで自宅に帰ると郵便入れに封筒が入っている。電車のきっぷと数万円である。


 「わかりやすいのね、行くしかないでしょ」


 お姉ちゃん……。


 お姉ちゃんの言葉にわたしも吹っ切れた。行こう、呪いの源に。


***


 土曜日、わたし達は急行列車に乗っていた。何故、あかねがいる?


「このお弁当美味しいね」

「あぁ」


 同意を求められても困るが、もう一度、付いてきた理由を聞くと。


 『悪者退治でしょ、わたしが参加しなくてどうする』

 

 で、あった。


 それに引き換え、お姉ちゃんは、普段はかけない眼鏡をしていた。文庫本を読む姿はとても可憐に思った。お姉ちゃんは偏差値の高い大学を出ているが、それ以上の賢さを感じた。


「しかし、指定席でないのがケチね」


 あかねの意見に、わたしに言われても困るが日付指定が無くていいのかと長考する。大体、自腹のあかねが言うなと思う。


 ま、このヤンデレはヤンデレだし深く考えるのは止そう。


 その後、特急列車から各駅停車に乗り換えて着いた駅はド田舎であった。


「更にバスに乗るのよ」


 バス停に向かうとバスは二時間に一本であった。


「ここからは持久戦ね」


 大げさな事を言うなとお姉ちゃんを見ると。お弁当を食べている。あかねのフラインクで気がつかなかったが、お昼がまだであった。わたしも食べようとお弁当を開く。


「げ、よさっている」


 あかねが食後に袋を振り回していたからだ。


 これは人災だ!わたしが抗議するが証拠が無いと返ってきた。

ダメだ、コイツと、よさったお弁当を食べる。しかし、バス来ないなと途方に暮れる、まさに持久戦であった。

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