第7話 お姉ちゃんの危機

 わたしが子供の頃の事である。


「わたしは殺されかけたの」


 お姉ちゃんが悲しそうに言う。それは村の掟であった。言霊の様にお姉ちゃんを縛り続けた。


「また、慶太ちゃんが大人になったらこの続きを……」


 浅い夢が終わり、日差しが部屋に差し込む。夢か……お姉ちゃんが幼女化した事と関係があるのかな。


 うん?


 また、例の番号からの不在着信がある。Y県の某都市からの電話であった。わたしはポリポリと頭をかいて朝食を食べることにした。朝食はご飯とふりかけだけである。基本、料理の苦手なわたし達は朝食など簡単に済ませるのだ。


「ピンポン、ピンポン」


 誰だ、この朝早くに……。渋々、玄関のドアを開くと。あかねである、制服を着て登校しようと言うのだ。


「後、三十分待て」


 わたしが冷たくあかねをあしらうと。


「文芸部の朝練だ、部室で本を読むのだ」


 小学生かと突っ込むが、一度決めたことは頑固なあかねには困ったものである。


「いいから、三十分待て」

「ケチ」


 しょげている、あかねにわたしは今朝の夢を相談してみる事にした。


「なあ、お姉ちゃんが危険に直面していたらどうしする?」

「寝る」


 ああああ、相談する相手を間違えた。


***


 昼休み、わたしは校舎の裏で例の番号に折り返しの電話をかける事にした。


『プルルル』


 出ない……。


 ダメだ、心が弱っている。こんな電話にお姉ちゃんの危機をつなげるなんて。すると、あかねから着信がある。


『今後の文芸部の活動を会議するのだ、直ぐにこちらに来るのだ』

『ヘイヘイ』


 わたしは二つ返事で部室棟に向かう。文芸部の部室の前に着き、中に入る。すると、机の上に大量の本が置いてある。


「昨日、ブックオンで安いのを買い漁った」


 自慢げにあかねが本の上に手を置く。本気だ、文芸部をまともな部活にしようとしている。


「活動はリレー小説もあるわ、3人で分担して小説を書くの、それを校内の部活掲示板に載せるの」


 夢は大きくと言うが、わたしの国語の成績を考えると高いハードルだな。そう言えば、お姉ちゃんが居ない。少し心配になってスマホを取り出した時である。


『ガタ』


 部室内に誰か入ってくる、お姉ちゃんであった。


「お姉ちゃん、顔が真っ青だよ」

「少し、体調が悪い」


 とにかく、保健室に行こう。わたしはお姫様だっこで保健室に向かう。

「け、け、慶太ちゃん、恥ずかしいよ」


 ま、幼女のお姉ちゃんだけにできる事だ。保健室に着くとお姉ちゃんを保健の先生に見て貰う。


 先生は首横に振り、病院で見て貰うように言う。


 仕方がない、タクシーで病院に行こう。

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