第6話 ヤンデレ少女は文芸部

  難しい事を考えても仕方ない。そろそろ、寝るか。


「慶太ちゃん、毛布ありがと」


 お姉ちゃんがソファーから起きてくる。スタスタと現れたのはお姉ちゃんである。しかし、妹の様に可愛いが、出ているオーラは姉姉である。


 そして、目が合うと。


 えへへへへ……。


 と、お姉ちゃんから自然と笑みが見える。俺は切なくなり、この幸せを守りたいと思う。そんな、シスコンの想いを巡らせていると。


『慶太ちゃん、起きている?』


 あかねからのメッセージが届く。


『あぁ』


 わたしは簡単な挨拶を返すとしばらくして。


『ポ、一緒に寝たい』


 ストレートだな、流石ヤンデレ、デレたら素直で可愛い女子である。


 ま、純粋に甘えたいだけだろうが。


『おやすみだ、あかねも、もう寝ろ』


 そのメッセージを送るとスマホをしまう。わたしはお姉ちゃんにおやすみを言い。それから、自室に行くとベッドに横になる。見えるのは天井の風景だけである。


 眠れない、これが不安という気持ちなのか。それでも、微睡の中で眠りに落ちるのであった。


***


 わたしは高等部の校舎から窓の外を眺めていた。紫陽花の花を見つける。


 梅雨か……。


 今日の天気は晴れ時々スコールで、突然の雨にご注意とのことである。


 きっと、この世界は簡単な歯車で回っているのであろう。退屈な世界史の授業が終わり、休み時間になると。


 お姉ちゃんが寄ってくる。


「わたしは数学教師だよ」


 あぁ、知っている。


 素っ気なく言葉にならないほど小さな呟きを返す。


 わたしの反応にお姉ちゃんは、ぷくーと頬を膨らめる。


「だから、お姉ちゃんは数学教師なの」

「大丈夫だ、わたしも世界史は苦手だ」


 えへ。


 なんだか、お姉ちゃんは上機嫌になる。同意欲求であったか。面倒臭いがこれが普通のコミュニケーションなのであろう。


「慶太ちゃん、こっくりさんしよう」


 ヤンデレのあかねも近寄ってくる。基本、友達の少ないわたしはヤンデレでも問題としていない。


 すると、突然のスコールである。


「おっきなTシャツごっこしたい」


 あかねが外の豪雨を見て言う。ホント、説明の必要な遊びはダメです。要はずぶ濡れになり男子のTシャツを借りて着たいとのこと。


「それで、おっきなTシャツは何処にあるのだ?」


 試しにあかねの話に乗ってみると。


「文芸部の部室よ」


 普通に返事が返ってくる。本気だったのか?次の授業をふけて文芸部の部室に向かう。


「あかねは文芸部の所属だっけ?」

「まあね、これでも文学少女なのよ」


 わたしは帰宅部であるが、あかねが文芸部の文学少女とは初耳。


 部員は一人、予算はなし。活動自体が幽霊部であった。


「ここを秘密基地にしようよ」


 お姉ちゃんがまた電波な事を言う。


「部室棟の隅で静かだし、自販機も近い」


 簡単な理由だが少し気がひかれた。おし、文芸部に入ろう。


「で、おっきなTシャツは?」


 おっと、忘れるところであった。今更だがどうでもいいのである。


「えーと」


 出てきたのはガビガビのTシャツである。ま、わたしが着る訳ではないので何も言わないと思うが捨てるように二人に言う。


 こうしておっきなTシャツのイベントは終わりを告げた。

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