第31話 戦闘結果
「はやくはやくぅ! 彼らのスキルを教えてください! 私を焦らしてどうするおつもりですか!? 狩りの途中は我慢したのですよ! 今はもう帰りです。この周辺のモンスターは襲ってきませんし、他の冒険者もいます。安全は確保されています。さあ、速く私に教えてください!」
「わ、わかった」
話題の二人は仲良くじゃれ合っていた。二体のスキルは進化しても系統は変わっていない。アークは新たに防具系スキルが選択できた。ボイルが選んだのは剣と盾の騎士姿。取るスキルは一つしかない。
【上級片手剣業】【中級小盾業】【下級金属防具】【中級氷魔法業】【下級聖魔法業】【聖属性弱点】。
これがハイスケルトンになったアークのスキルだ。ステータスも全体的に上がっている。外見は骨格が少し太くなったような密度が増したような、威圧感が微妙に増した程度。金属防具を装備すれば、それなりのものにはなりそうだ。
片手剣の新アーツはスラストとスライストルク。ストラスは刺撃の上位版だ。スライストルクは小範囲攻撃の回転切りだ。僅かにノックバック効果がある。
小盾はシェルガードとプロボーグ。シェルガードはブロックガードの上位版。プロボーグは相手を挑発し意識を自分に向けるアーツだ。その効果時間は一〇秒。
氷魔法はアイスブロック、アイスフロスト、アイスグレイ、アイスコールドの四個。
ブロックは自分の少し前に、正四角形を出現させ敵の攻撃を防ぐ魔法だ。フロストは敵の足元を一秒間凍らす。うまくいけば体制を崩せる。グレイは敵単体に弱い吹雪を二秒間起こす。放出系の魔法だ。コールドは小範囲攻撃。一秒間弱い吹雪を振らす。
聖魔法はライトヒール、ライトフォース、ライトキュアの三個ヒールは名前のごとく回復魔法だ。フォースは一人を僅かに強化。効果時間は一〇秒だ。キュアは弱い状態異常の回復魔法。
次はディノスだ。新たに覚えさせたのは、回避行動に補正がつくスキルだ。
【中級戟業】【中級斧業】【下級革防具業】【中級火魔法業】【下級闇魔法業】【見切り業】
槍は戟に変化した。外見的変化は身長が少し伸び、ワイルドさが増した。知力も上がり、小学生高学年の知性を持つようになった。といっても大きな違いはない。
戟アーツは薙ぎ払い、二段突き、パワースピア、ブレイクスピンの四個。
薙ぎ払いは少し早い横振りの攻撃だ。足や頭などに当たれば僅かに体勢を崩すこともある。二段突きは名前通り。パワースピアは刺突の上位版。ブレイクスピンは回転を加え、貫通力を高めたアーツだ。スライムなどの、弾力があるモンスターに有効だ。
斧も瓦割り、アックスビート、ボーンクラッシュ、トマホークの四個だ。
瓦割は叩き割りの上位版。アックスビートは攻撃力上昇させる。効果時間は三〇秒。ボーンクラッシュは敵内部に衝撃を与えるアーツだ。敵が硬質な外皮ほどダメージが上昇する。トマホークは武器を敵に投げる。武器はブーメランのように戻ってくるが、それまでは丸腰だ。
火魔法はファイヤーウォール、ファイヤースピア、ファイヤー、ファイヤーボムの四個。
ウォールは前方に自身と同じ高さの壁を発生させる。スピアは着弾が速い魔法。ファイヤーは敵単体に向けて二秒間炎を放出する。ボムは小範囲攻撃。威力はボールより下だが、うまくいけば複数にダメージを与えられる。
闇魔法はダークディム、ダークコンフュ、ダークディア
ディムは敵単体に弱い眩暈状態にする。敵の耐性が強ければ無効だ。コンフュは混乱だ。ディアは自身も含めた仲間一人の、ヘイトを下げる魔法だ。
見切りのアーツはバックムーブ。これは僅かに速く後ろに移動できるアーツだ。
「なるほどなるほど。やはりスキルを選んで与えられるのは探検者ならではの力ですね。生者も亡者もスキル数は六個。ですがマイナススキルを省くと……。亡者と生者を比べると……。これはレポートが捗ります。それで次の狩りと進化ですが、明日にでもどうですか?」
「進化は無理だろう。スキルが全然上がらなかったからな。それに討伐数も関係してくる」
「それは進化の条件が判明したということでしょうか!! 何故仰ってくれないのですか!? さあ早く教えてください」
ボイルはスキル成長と討伐数のことを伝えた。
「ということは弱いモンスターを沢山倒しても、スキルが成長せず進化もできないと」
「だろうな」
ボイル自身のスキルは水魔法だけが一つ上がり【中級水魔法業】になった。新たに覚えたのはバブルスプラッシュ。ホースを摘まむと細くて威力がある水がでるが、そのような魔法だ。採取系スキルは使っていないため経験値はない。
適正レベル以上を倒さないと成長しない。最初の狩りはストーンゴーレムが第二エリアの格上だったから上がった。だが、ボイルたちのスキルはもう第二エリア並に成長していた。
「まあ、討伐数だけなら弱くてもカウントされるかもしれないがな」
「スキルが成長しないということは、ある意味経験則になっていないということです。それならば、討伐数としても数えられないでしょう」
「その可能性のほうが高いな」
「進化に必要な要素は、自身が成長できるほどのモンスターを一〇〇体以上の討伐と、スキル成長の二つですか」
次の進化に必要な討伐数が同じとは考えにくい。故に以上とトリスは言った。
「その認識であっている」
「……私が滞在できる期間では、次の進化には立ち会えません。狩りよりレポートに専念します」
「エットタウンの住人ではないのか?」
「住人ならオベールに滞在しません。私は休暇を満喫しにエットタウンに来ただけですよ」
ボイルは確かにと妙に納得した。そしてパイルバンカーが使えないとなるとゴーレム狩りも辞めどきだ。
「モンスターとの触れ合いも後二日。三日後からは長い道のりを移動して職場に。そして錬金の仕事が大量に待ち構えています。憂鬱です。ボイルさん、アークさんを私に下さい」
「寝言は寝ていえ」
「酷いです」
ボイルも社会人だ。日曜日の夕方のような憂鬱な気持ちはわかる。だが、それでアークをあげるのは話が違う。
「もうエットタウンに到着ですか。ボイルさんはどうしますか? 私としてはレポート作成時間も、アークさんたちには側にいてほしいのですが」
「一旦オベールに行く。俺は他の探検者と約束があるからな。アークたちの好きにしていいぞ」
「では、アークさんたちは私の側で確定ですね」
「アークたちが決めることだ」
彼ら二人はじゃれ合っていたが、話題が振られたため一度やめる。
「カタカタ」
「……ゴブ。ゴブゴブ」
アークは素振りを、ディノスは寝る真似をする。
「ということだ。残念だったな」
「そんな……なんということでしょうか」
トリスは大げさに絶望していた。だが本人は至って真面目だ。アークたちは気まずそうにしていたが、ボイルは我関せずだ。
「ほら着いたよ! 馬鹿やっていない速く降りた降りた」
四人は素直に降り、オベールに向かう。ボイルたちは街に入ると装備類を解除してインナーの農民服になる。
「本当にダメですか?」
「くどい。アークたちにフラれたんだ。甘んじて受け入れろ」
「わかりました! モンスターのためにも受け入れましょう! では皆様またお会いしましょう」
「今日はありがとうな。またな」
「カタカタ」
「ゴブゴブ」
ロビーでトリスを見送った三人は店員から鍵をもらい部屋に行く。
「ゴブー!」
「ディノスは相変わらずだな」
「カタカタ」
いの一番に部屋に入ったディノスは布団目掛けてダイブした。
「アーク。俺も一、二時間ほど寝る。起きたら約束の時間だ。今日は構ってやれなくて悪いな」
「カタカタ」
手を左右に振り気にしてない意思を表す。
「そうか。……もう寝るな。おやすみ」
「カタ」
ボイルは横になってログアウトを選択する。
《ログアウトを開始します。お疲れ様でした。またの探検をお待ちしております》
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