やれること

 与と人探しは、決してベストマッチとは言えない。


 いや、向いていないのは人探しではなく、タイムリミットか。与は試行錯誤を繰り返して、極みを目指すタイプの天才だ。


 速いことに秀でているのではなく、時間をかけられる才能がある。遅いのではなく、妥協を許さず、もう一段、さらに一段、高みを目指せる。合格点でもなく、一〇〇点でもなく、一二〇点を目指せる才能。


 要求の高さも相まって、ギリギリになるだろう。それでも間に合うと確信できるくらい、僕は与のことを信頼している。


 さて、僕に手伝えることはない。手が空いた。


 こんなとき、以前の僕なら体感時間を早めるために布団を被っただろうが、上栫さんと過ごした日々がそれを許さない。


 彼女はとんでもない速さで、僕の爛れた習慣を修正してくれている。


 手が空いたのなら、やれることを。やれることがないのなら、今後の予定の解像度を上げる。


 僕にやれること。


 上栫さんは言ってくれた。祷は考えられる人間だと。


 僕から言わせれば、そんなことはどんな人間にだってできることで、僕はたまたま並行世界周りの知識を持っているだけなのだが、今、この世界で考えることに意味を与えられるのは、僕と上栫さんだけだ。


 気持ちいい自虐に浸っていないで、頭を回せ。


 今回のことで、仮定すら立てられていなかった、犯人の目的についてのヒントをもらった。


 結局、しらみつぶしにするから仮説は要らない。


 その通りだ。だけど、僕にはそれしかできない。


 目を閉じて、思考を巡らせる――心の端に、不安を押し退けて。


 上栫さんがいなくなってしまったら?


 次のループでも、布団の中が冷たかったら?

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