第31話 きみの声が聴きたい
心を通わせた相手と交わることがこんなにも気持ちいいことだなんて、知らなかった。
「ん、ぅ……っ、あっ!」
鼓膜に届く、甘い声。
肌を撫でれば腰が跳ね、ぷくりと腫れた乳首に吸い付くと甘い声がひときわ大きくなった。
は、と吐いた息に熱が籠る。
鎖骨にキスを落とし、そのまま上がっていってツェツィーリアの首に柔らかく嚙みついた。
「やっ、やぁ……っ! ヴェルト……っ」
「ツェツィーリア、愛してる」
「ん゛んぅっ、っ、ぁ……!」
首筋から更に上がって、ツェツィーリアの小さな耳を食みながら愛を囁くと、ツェツィーリアの肌が粟立った。
息を何度も吸って、ジークハルトの手によってとろけていくツェツィーリアの姿は、非常に美味しそうだ。
こちらを見るとろけたその目に、腹の奥がゾクリと疼いた。
ツェツィーリアと再会を果たして数日。お互い仕事が忙しく、また、フェリックスの監視が厳しく二人で会う機会がなかった。
どうにかジークハルトに用意された邸宅にツェツィーリアを招いたのは、再会してから一週間経っていた頃だった。
あと数日で共和国自治軍たちは自国に帰ってしまう。ギリギリだった、なんてホッとしてしまった。
私服姿で現れたツェツィーリアは、あの頃と何も変わっていなかった。ゆるいカットソーに、スキニーパンツ、ヒールのないパンプス。男を誘うための服かと思っていたのだが、どうやらあれらはただ単に彼好みの服だったらしい。
自室で酒を楽しみ、気づいたらお互いに唇を求め合っていた。ぽってりと濡れた瞳でこちらを見上げるツェツィーリアが堪らなくて、急いで抱え上げてベッドに向かってしまった。
「んぅ、ふ、んっ」
キスをしながら鼻から抜けていく声に、興奮する。
誰にも止められない場所で、ベッドに横たわる彼に馬乗りになって、こうして舌を絡め合うことのなんと幸せなことか。
「は、ぁ、ツェツィーリア……いい?」
「ここまで来ておいて、今更何言ってんだお前」
ツェツィーリアが、見慣れない顔をしながらクッと喉の奥で笑う。
ベッドのシーツに髪を散らすツェツィーリアはこれまでたくさん見てきたのに、こちらを少し小馬鹿にしたような表情で見上げてくるツェツィーリアは初めてだ。彼のその表情が新鮮で楽しい。
軽いキスをして、頬、顎、首筋と下がっていき、ゆっくりと鎖骨を噛みながら片手でカットソーの下から手を這わせていく。
辿り着いた先の乳首をくりくりといじくり回す度に、ツェツィーリアは身体を震わせて啼いた。
「ふっ、ぁっ……、ぁっ」
前より声が控えめかもしれない。
ちらりと見上げると、両腕で口を押えていて、それが気に食わなくて思わず起き上がって彼の手を掴んだ。
「ジルケ。声、抑えないで」
「ぃ、やだ……」
「どうして?」
「こんな声、嫌だろ、お前だって」
今更何を言っているのか。
きょとんと目を瞬かせると、ツェツィーリアは顔を赤く染めてそっぽを向いてしまった。”ツェツィーリア”ではなく”セシル”本人として抱かれることに、違和感があるのだろう。
可愛い。愛しい。
胸がきゅんきゅん切なくなる。
そんな彼の顔に、興奮する。
「っ、はっ、なんで興奮してんだよ」
固くなった熱が太ももに当たったらしい。顔を真っ赤に染めたまま、ツェツィーリアは困惑気味にこちらを見上げてくる。
「興奮するよ。好きな人相手だもの」
「なんだよ、それ……」
「ジルケは違うの?」
「……」
黙り込んでしまったツェツィーリアの下腹部を撫で、そっと下に下ろすと熱が籠っている。そのままズボンと下着を下ろしてしまうと、ツェツィーリアは身体を丸めようとしてくる。それを阻んで彼の肉棒に指を絡ませると、彼の喉奥でキュウという声が鳴った。
「ツェツィーリア、声、聞きたい」
「いやだ……」
「ジルケ」
お願い、と言ってみるが、ツェツィーリアは頑なだった。
それならば、無理矢理にでも出してもらう他ない。
チュウ、と乳首に吸い付いて、彼の肉棒を擦り上げる。零れ落ちた先走りをたっぷり指にまとわせて更にいじめてみると、ツェツィーリアの腰がガクガク揺れた。
「ふぁ……っ、あっ、まって、ちょ……あ、あっ……!」
こちらの所業を止めようと、ツェツィーリアの口から両腕が離れた。それを見計らってまた攻め手を強めると、聞き慣れた甘い声が出始めた。
それが嬉しくて、顔を徐々に下げていく。こちらの意図を理解したツェツィーリアが「ばか! やめろ!」と止めてくるが、止めるわけがなかった。
鼠蹊部にキスを落とし、彼の肉棒の亀頭にもキスを落とす。チラリと上を見れば、真っ赤な顔でこちらを睨んでいて、それが楽しくなって視線を逸らさずパクリと肉棒を咥え込む。
「は、ぁっ、やめ、やめろ、アアッ!」
根元まで咥え、そのままズロロと音を立てて吸い上げる。亀頭に舌を這わせ、息苦しくなったら口を離して手で攻め立てる。
ガクガク揺れる腰は止められず、ツェツィーリアはジークハルトの手の甲に爪を立てながら果てた。濃くドロリとした白濁を指先に集め、後穴に指を這わせた。彼の身体中にキスを降らすのも忘れない。
つぷり、と中指を突き入れると既に中は柔らかくなっていて、ツェツィーリアも期待していたのかと嬉しくなった。
「柔らかい」
「……いうな」
「嬉しいよ、ジルケ。僕とするのはもう嫌になっているかと思っていたから」
入り口の浅い部分をゆっくりと撫で、腹側を撫であげていく。ぷっくりと腫れたしこりの周囲を撫でていると、焦ったいのか腕を叩かれた。
「そんなわけ、な……っ、あっ、ああ……! や、ヴェルト……っ、あぁあっ」
「嫌?」
「いやじゃない……あっ、もう、ちゃんと、触れよ!」
ぬちぬちとツェツィーリアの反応を楽しみながら中に触れていると、また腕を叩かれる。抗議を受けたとて、こればかりは丁寧に解していきたかった。丁寧に、優しく、彼が痛みを感じないように。
「あっ……! あ、はぁっ、ん、んっ……!」
途中でローションを足しながら、解していく。こちらの指先の動きひとつで身体を跳ねさせるツェツィーリアが、愛しくて愛しくて堪らない。
しこりを優しく撫でながら、指の届く範囲まで出し入れしていると、ゲシとかかとで太ももを蹴られた。本来のツェツィーリアは足癖も悪いらしい。
「痛い」
痛くはないが、一応。彼の足首を掴んで、ぐいと大きく開いてやると情けない声が聞こえてきた。
「もう一本入れるね」
「うぅ……」
まだ恥ずかしさが快楽を上回っている。腕を掻くばかりだった彼の手は枕を掴んでいて、人差し指を挿入するころにはギュウと手の色が変わるくらいまで握り締めていた。
そんなに嫌なのだろうか、と顔色を窺うと、目はとろけていて、肩まで赤く染めたままこちらの手を見るツェツィーリアがいた。可愛い。可愛い。可愛がりたい自分の他に、ゆるく甘い快楽に堕ちていけと願う自分がいた。
「ぅああッ! は、あっ、う、あ……」
「ツェツィーリア、気持ちいい?」
枕を握り締める彼の手を、足首を掴んでいた手で解き、シーツの波の中で握り締める。指を絡め合っていると、ツェツィーリアの指がこちらの手の甲を撫でた。
「ねぇ、気持ちいい?」
「きもち、いいから……っ、あっ、ヴェル、ト……! や、は、あぁっ!」
二本に増やした指を、更に三本に増やして、中に入る準備を進めていく。興奮が止まらない。それを知らしめてやろうと、彼の太ももに熱をわざと当てる。それにビクリと身体を跳ねさせたものの、中はキュウキュウ締め付けてきて、彼も期待をしているのだと分かる。
愛しい。可愛い。
「も、もう、いいだろ……なぁ……っ、~~~ッ! あっ、あっ、いく、まって、いく……!」
ここで、ようやくしこりを強く押し潰しながら撫で上げると、ツェツィーリアの声は面白いほど大きくなった。撫でさすると甘い声がひっきりなしに出る。その声をもっと聞きたくて、二本の指でしこりをつまみながら、残りの指でしこりを強くリズムよく押し続けた。
「ッひっ、あ、あああっ……! 出ちゃ、出ちゃう、まって、いく、いくいくいく……っ、~~~ッ、ああぁああっ!」
切羽詰まった声が聞こえたと思えば、身体を大きく跳ねさせてツェツィーリアが果てた。腹を汚した白濁が、汗と混じってシーツに零れていく。
ぜぇぜぇ息をしながら強い快楽に身を委ねているツェツィーリアの中から、指を抜く。指が抜けていく感覚も気持ちいいようで、小さな甘い声が聞こえた。
「ツェツィーリア、入れるよ」
こちらの声に、ツェツィーリアがゆっくりとこちらを見上げてくる。
服を一枚一枚見せつけるように脱いでいくジークハルトを見ながら、彼はゆっくりと頷いた。
*****
「あっ、はぁっ、ああっ、んッ、ああぁああっ!」
部屋の中に、ツェツィーリアの嬌声が響く。
ごちゅごちゅと酷い水音が、ツェツィーリアの腹の奥から聞こえてくる。容赦なく中を掻き回すと、ツェツィーリアは何度も中で果て、痛いくらいにこちらを締め付けてくる。それをどうにか奥歯を噛んで耐え、代わりに彼の好きな最奥を押し潰した。
「ッ、あ゛~~~ッ! とま、とまって……! とまれよ、お゛ッ」
止まることなんて、できるわけがない。
彼の腰を痛いほど握り締めて、気持ちいいままに腰を振る。
あぁ、気持ちいい。気持ちいい。
生理的な涙を流しながら、こちらの腕に縋り首を横に振るツェツィーリアは、何度目かの白濁を吐き出した。既に薄くなってきたそれに、思わず口角を上げてしまった。
それが、気に食わなかったのだろう。
されるがままだったツェツィーリアの脚がジークハルトの腰に絡みついたと思った途端、突然視界が反転したのだった。驚いてシーツの海に沈みながら見上げる。
「っ、ツェツィーリア?」
「やられっぱなしは性に合わねぇ。いいから、寝てろ。俺がやる」
どこか勝ち誇ったような顔で、ツェツィーリアが馬乗りになって自ら腰を動かした。
「あっ、はあっ……、んっ、あっ……!」
自分でやると言い切ったくせに、自分の気持ちいい場所に当てるのは嫌なようで、どこかぎこちない。
「まだ、動くなよ……っ? は、はっ……ん、んんっ……!」
前後上下に動く彼の腰を掴もうとすると嫌がられた。
ぬちぬち鳴る後穴に、揺れる彼の肉棒。気持ちいいところに当たっていないせいで、どこか物足りなさそうなツェツィーリアの顔。
何もかもが腰にくる。
「やっ、まって、待てよ、ああぁあっ!」
「ごめん、むり」
彼の腰を掴んで、ガツガツと奥を抉る。
自重でいつもよりも深く入り込んでしまうようで、慌ててこちらの腕を静止してくるものの、止められるはずがなかった。
「やだ、や、だめっ! っひぃ゛……っ゛! ぉ゛っ゛……! ~~~っ゛ッ!!」
「は、あ、」
健気に受け止めていた身体がジークハルトの上に乗ってくる。とうとう耐えられなくなったらしい。それを受け止めながら腹筋で起き上がって、彼の身体を抱き締めながら突き上げた。
ジークハルトに縋りつくツェツィーリアはされるがままだ。
「やめ、や゛っ……! あぁあ゛っ! あ゛っ! や゛らっ! ああああッ!!」
「ねぇ、ツェツィーリア、いれていい?」
「やだっ、おくやだっ、あ゛っ! あ゛っ! っう゛、んぅ、~~~~ッ!」
嫌だと言う口をキスで塞いで、柔らかくなりつつある奥を攻めた。
気持ちいい。
愛しい。
こんなに気持ちがいいのは、初めてかもしれない。
口を合わせながら「気持ちいい」と呟くと、ツェツィーリアが必死に頷いてくれた。
「気持ちいいね、ツェツィーリア」
「んんぅ、ぁっ……! ぅ゛、きもち、いい……! あっ、あ、う、あ」
奥が徐々に開いてくる。
「ジルケ」
「やめ、耳元でしゃべるな……っ、あァあっ!」
ごちゅっ、と鳴ってはいけない音がした。
「っ、ッッ゛~~~~~ッッッ゛!!!」
「はあ……気持ちいい、ツェツィーリア」
目を白黒させて、何が起こったのかまだ分かっていないツェツィーリアがこちらを見る。頼る相手はジークハルトしかいない状況で、暴力的な快楽に息もできないらしい。
疲労困憊といった様子のツェツィーリアを無視して、律動を再開させた。
もう言葉も発せないまま、揺さぶられるままにツェツィーリアは甘く啼いた。
気持ちいい。
まさか、またこんな甘い時間を過ごせるようになるだなんて。
夢にも思わなかった。
「ジルケ、ジルケ……っ」
「あ゛ああっ、あっ、やめ、やっ、あぁああっ! ヴェぅ……ヴェル、ト……っ!」
喘ぐ合間に、偽名を呼ばれる。
それがどうにも嫌で、ツェツィーリアの耳を食んだ。
「ツェツィーリア、名前、呼んで」
「……? ヴェルト……っ?」
「違う」
その声で、その唇で、呼んでほしい。
律動を止めて、まっすぐツェツィーリアの目を見つめると、紫色の瞳がぱちりと瞬いた。
「ジーク、ハルト……」
「うん」
「ジークハルト」
「うん、セシル」
名前を呼ばれるたびに、愛しさが増す。
これが幸せなのか、と嚙み締める。
「セシル、愛してる」
「おれも、好き、ジークハルト」
甘いキスが落ちる。
あぁ、幸せだ。
「これからは、ずっと一緒だ、ジークハルト」
「っ! うん、うん、一緒にいよう、セシル」
戦争は終わった。
後処理はいろいろ残ってはいるが、もう二人の間に障害はなくなった。
あとは、互いに幸せになるだけだった。
ぐちり、とツェツィーリアの後穴から水音が響く。
彼の尻肉を掴んで揉むと、キュウと啼かれた。
「動いていい?」
「お前なぁ……いいよ、来いよ」
あの頃と変わらず、そこの主導権は握りたいらしい。
お許しは得たとばかりに、ジークハルトはペロリと舌なめずりしたあと、好きなように動かせてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます