第2話 モモジロウ様から、『アヤと過ごした夏』の書評をいただきました。

 旅行代理店に勤める25才の優秀なOLであるアヤの、売れない小説家の達也と、

不動産会社の社長の親を持つ金持ち、二郎との間で揺れる女心を描いた作品である。


 そう要約してしまうと、平凡な作品に見えてしまうかもしれないが、そんな生やさしいものではなく、アヤが以前付き合っいた鬼太郎という男はゲイだから、その勤める店でのゲイの生態の描写あり、同僚で親友のモナにしてもメイド喫茶に勤めたことがあるから、ピンクサロン、ファッションヘルスなど風俗についての記述あり、達也が書いた小説の中身の記述あり、サイパン、グアムの描写ありと、物語は多重多岐に渡って進行するのだ。


 話の運びも語り手の視点がアヤ、達也、モナなどからと、三人称小説の体裁で、読みどころ内容とも盛り沢山である。


 しかし、メインはなんといっても、魅力的な結婚前の多感な若い女性アヤの揺れる女心の描写だろう。


 アヤはダメ男の達也に惹かれながらも、イケメンの二郎のプロポーズを受けることにする。

 

 しかし、アヤの達也とのいきさつを知っている二郎は、二郎が住んでいるサイパンに連れてきて欲しいと提案する。


 このあたりから、この小説はぐっと精彩を帯び、読者の心にびんびん響いてくる感じとなる。結局、アヤ、達也、モナと三人でサイパンを訪れるのだ。


 アヤに惚れ切っている達也は、サイパンで事情を知って荒れに荒れる。そして、アヤに手酷く振られた形となる。


 挙式が決まったアヤはというと、二郎が浮気と借金まで為ていることを知り、

ショックのあまり家出しとあるホテルの39階で睡眠薬を飲み手首を切るという事件を起こす。


 達也は電話で自殺を思いとどめさせようとするが、どうにもならない。


 物語は達也も含めて、それぞれがハッピーエンドで括られるのだが。私にとっては知らない世界のことが多く語られ、興味深く、かなり長い小説なのと惹きつけられてあっという間に読み終えることができた。


 作者渾身の野心作力作である。

 私よりも何回りも年下の方だろうと思うが、感性、感受性は近いものを感じ取る事が出来てよかった。

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