第8話 ヘラクレスの角
ヘラクレスが現れると、その後クワガタが現れる確率が高いらしい。
理由は不明。
生息域が同じという事からやってくる?
ただ一般的にカブトムシとクワガタは生態が微妙に違うんだよなあ。
全てではないが、カブトムシの産卵は基本地面の下。
一方のクワガタは朽ちた木の中に、それも広葉樹にメスが入り込み産卵するようだ。
だが好む木が同じ?で、クヌギやコナラのような広葉樹らしい。
針葉樹では駄目らしい。
俺はヘラクレスの角を刺さった木から抜くのに苦労していた。
あまりにも深く刺さっているので抜けないのだ。
それにヘラクレスの角は引っかかりがあるから力ずくで抜こうとしてもなかなか抜けない。
しかも今回2本共刺さっている。
・・・・やってみるか。
まだ周囲に新たな魔物は出現していない。
ここは【収納】スキルを使ってみようと思い、カードを手にする。
手に触れた物を収納できる。
本当は戦闘で使ってみたかったが、ヘラクレスの角はいい素材になるから是が非でも持ち帰りたい。
なので躊躇わず使った。
すると目の前からヘラクレスの角が消えた。
俺はこの際だからと外骨格を全て収納した。そしてもう一度角を見てみたいと思い念じると、右手に現れた。
おお!便利だ!
そして俺はそのまま角を振り回した。
<ゴン>
うわ!何かすごい衝撃を感じ、振りぬいた先を見ると、何たる事だ!運がいいのか悪いのか、デカいクワガタがひっくり返っているではないか!
もしかして角に当たった?
全く気が付かなかった。
藻掻いているようだが今のうちにもう一度【抽出】スキルを使ってみるか?まだ効果時間はあるはずだ。
俺はひっくり返っているクワガタの頭部に触れ、【外骨格を抽出!】と念じる。
するとまたもや外骨格と本体が分離状態。
こうなるとなんと哀れな虫なんだと思ってしまう。
そのまま【収納】スキルを用いクワガタの外骨格を【収納】した。
何だか妙に綺麗なんだが。
そしてふと思った。生きたまま【収納】するとどうなるのか?
今ならできる。
そう思い少しためらったが外骨格を失いひっくり返ったまま力なく蠢いているクワガタに触れ、【収納!】と念じてみた。
すると呆気なく収まった。
そう言えば生きたまま【収納】するとその後の扱いはどうするんだったかな?
何か記載してあった気もするが、まだそこまでちゃんと読んでいなかったな。
一応取り出すか。
クワガタを取り出すと、既に死んでいた。
え?もしかして即死?
もしかしてこれは相当やばいんじゃ?
俺はどうした事か、急に恐怖を覚えた。
万が一人間を収納してしまたらどうなるんだ?
それ以前にどうして誰も戦闘時に【収納】を利用しないんだ?
これはかなり凄いぞ?
日本だけでもハンターは300万人はいるはず。
今まで誰も試した事が無いのか?
抽出スキルもそうだ。
そもそも魔物に直接手を触れて仕留めると言う発想自体が無かったとか?
武器や魔法により仕留めるのが今までのセオリーだったはず。
未だかつて魔物に触れて戦う奴を見た事が無い。
俺の中に存在する常識が崩れていく感じだ。
そろそろ【抽出】スキルの効果が切れる。
結果は素晴らしかった。
今後もっと使い熟せば更なる成果が期待できそうだ。
そしてもうひとつのスキル【凝固】だ。
これは明日だな。魔力が残り少ないと感じる。
無理はしない。
俺は何か見落としがないか周辺の地面を見ていたが、流石に無いな。
いや、ヘラクレスの死体を持って帰ろう。まだ魔石を取り出していない。
尤も俺は解体の類いはした事が無い。
俺達ハンターはあくまで魔物を討伐するのが役目だ。
その後、色々やらかした痕跡を綺麗にしてくれるのが
そしてもうひとつ
この3つの職業は大抵セットになっていて、掃除人ががれきの撤去や清掃を行い、解体人が魔物を運搬しやすくしてくれ、運搬人が仕留めた魔物をハンターギルドへ運んでくれる。
そしてハンターギルドで運ばれた魔物を更に解体し、素材と不要物に選別してくれる手はずになっている。
自分で全部しろって言うかもしれないが、ハンターにそれはない。何故かって?そこまで魔力が持たないからだ。
カードを用いてスキルを扱う。
だがかなり魔力を持っていかれる。
その為後片付けをする余力は実際・・・・ない。
ぶっちゃけると運搬人は仕留めた魔物以外にもハンターをハンターギルドや病院へ運ぶ役目も担っている。
掃除人は血や泥、その他色々汚れた俺達を綺麗にしてくれる。
浄化スキルも万能ではない。
できうる限り汚れを除去してから使った方が魔力を節約できる。
解体人は場合によってだが、連れ戻すのに支障があると判断すればハンターの装備を外したりしてくれる。
話を戻す。
魔物の魔物たる所以。
それが
もしこれを直接魔物から取り出す事が出来ればあっという間に魔物は死ぬだろう。
だが手段が無い。
抽出スキルも触れている部位だけにしか適応されない。
つまり
これは今後色々と試して見定めないといけないな。
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