第2話 集団戦

 急ぎハンターギルドへ向かったが、既にかなりの人数が居た。


 凄い騒ぎだ。

 そりゃあそうだろう。いくら魔物と戦うのが義務とはいえ、身体が資本だ。

 夕方まで戦っていたのに、まだ日が明けないうちからまた戦いに向かわねばならないのだ。


 俺が到着して暫くし、概ねハンターが集まったようで職員が、


「皆さん色々あると思いますが緊急事態です。言いたい事も文句もすいませんが魔物を仕留めた後でお願いします。」


「うっせえ早くしろ!こっちは気が立ってんだよ!」

 そりゃあそうだろう。夜中にたたき起こされたようなもんだからな。

 もしこれで連絡がつかないとかで来られなかったら、きっと凄いペナルティをくらうから皆仕方なしにやって来たんだ。


 なんだかんだで無理矢理召集させられた訳だから荒れて当然だ。


「実は昨日10名からなる討伐隊が失敗しまして、全員未帰還です。」


 一瞬で場が固まる。

 10名のハンターが未帰還って。しかも全員。

 夜中専門メンバー10名も向かっていますが、連絡がつきません。」

 おいおい何だよそれ。


「この後他の都市からも応援がありますが、この場に今20名います。できればここで仕留めて頂きたいのです。」


 おいおい夜専門10名が連絡付かずってどんな魔物だよ!

 俺は今まで何度も死にかけたが、こんなヤバい案件に関わった事は数える程しかない。

 その中でも最悪だな。


「それよりターゲットは何だ?」

 俺は聞いてみた。

「・・・・蛇です。」


「帰る!」

「あれは駄目だ!俺も抜ける!」

 次々と離脱宣言が。


 総勢20名が音信不通になる蛇だ。きっとろくでもない。

 この手の魔物は総じて毒を持っている。

 防毒の装備なんか持って来てないぞ。

 何で教えてくれなかったんだ!

「おい!防毒の装備を持ってこなかったぞ!貸出しはあるのか?」

 誰かが確認している。

「すいません。既に先発隊が持ち出しています・・・・」

 どうすんだよ。


「その代わり色々なカードを用意しましたので、これで何とかお願いします!」


 気付けばガタイのでかいやつが隣にいた。名前は何だっけな?

 確か佐久真 菊次郎さくま きくじろうだった気がする。

 この中で間違いなくリーダー格だ。

「おう岩!また一緒だな!お互い死なないように死ぬ気でやろうじゃないか!」

 死なないように死ぬ気ってどっちだよ!


「あんたが指揮するのか?」

「さあ?相手次第だな。デカけりゃあ指揮も行き届かねえしな。」

 大蛇だと全長20メートルとかある。前後で攻めればお互いの姿も分からなくなるからな。


「まあ俺が使う得物とあんたの斧がありゃあ大抵何とかなりそうだがな。」

 デカい菊次郎は俺と同じく投擲しても戻ってくる斧持ちだ。

 返却スキルは付与しやすいのか?


 俺達はそれぞれ【回復】【解毒】【身体強化】【韋駄天】【浄化】等の良く使うカードを手にし、現場へ向かう事になった。

 だがこの後解毒カードが戦闘中に全く使えないと知る事になる。

 まあ気休めだな。

 何せ毒をくらえば身体が動かなくなる。

 誰かに解毒してもらえばいいが、自分では何もできなくなるんだよな。

 そう言った毒状態になった時は、きっと周囲にいる連中も同様の状態だ。

 カードをどう使うか、ハンター歴10年の俺でも悩む。

 しかもベテランハンターは殆んどいない。

 20名の中に俺より年上は、実は3人しかいなかったりする。

 30歳まで生き延びる確率はかなり低いからだ。


 こうして俺達は魔物が向かっているという国立スキル学校目指して移動を開始した。

 今俺達がいるハンターギルドから【韋駄天】スキルを用いれば、10分ぐらいで到達する距離だ。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 魔物が居た。

 デカい蛇だ。

 20メートル?もっとあるんじゃないのか?

 口を開ければ人なんてあっという間に丸のみだな。

 それにあの牙だ。間違いなく毒持ちだ。

 俺はかつて毒蛇相手に3度戦った事がある。

 胴と首の間を断ち切ってしまうのが一番。

 首は何処だって?俺にも分からんがまあそれは見た感じで何となく?


「おい岩!てめえ蛇とやりあった事あるか?」

 菊次郎は俺の隣にいる。せめて女がだなあ・・・・いや、女性ハンターは全員既に蛇を見て戦意を喪失している。20名中5名だ。

 俺もそうだからな。戦意というか、やる気が出ない。生理的に駄目だ。


 まあ女性のハンターはこうした時はサポートに回るのが鉄則だ。


「3度ほどある。首を狙うのがいい。」

「首か。頭じゃないのか?」

「頭はもっと後だな。」


 そんな会話をしていると、全員配置についたようだ。


「よしやろうじゃねえか!」


 菊次郎がいきなり斧を投げた!げ!何でいきなり投擲なんだよ!しかも頭に向かったぞ?俺の話を聞いていなかったのか?

「何で頭に投げるんだよ!」

「岩のくせにうっせえ!俺の言う事が聞けねえのか?」

「そうじゃない!今頭を攻撃するのはまずいんだよ。」

「何言ってやがる!さっきは頭を攻撃しろって言ったじゃねえか!」

「そもそも頭じゃなく首だ!頭はもっと後って言ったばかりじゃないか!それに状況は刻一刻と変化するんだ!もっと周りをだなあ。」

「うっせええ!」

 ミスを認めねえとか面倒な野郎だ。

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