第32話噛み合わない歯車(水希)

(水希視点)

私は、ベッドの中で必死に震える身体を両手で抑える。

呼吸が浅く、過呼吸気味になり、頭の中を気味の悪い黒いモヤのようなものが覆い尽くす。


これまで私を照らしてくれていた彼の光が、昨日のイベントで会った彼女の言葉によってすべてを闇に覆われたかのような感覚だ。


…………いや、もしかしたら変わったというよりどこか知らないフリ、見ないふりをしていた現実をただただ突きつけられただけのようにも思う。


「本当に………………私って最悪な女だ。

あの子の言う通りだよね………………。」


あの子、それは昨日イベントに来ていた女性で、名前は北谷有栖(きたや ありす)。

私が事故にあって高校を辞めるまで、親友と呼べるほど、仲のいい友人だった。


そう…………あの時までは…………。


〜〜高校1年の春〜〜

私は地元から少し離れた高校に入学した。

お父さんの仕事の関係もあり、引っ越しをしなければならなかったのが主な要因だった。


そんな中でも、私が楽しく高校生活を送ることが出来たのは、有栖こと北谷有栖がいた事が大きかったと思う。


彼女とは幼稚園からずっと一緒で、何をするにも2人で、と言っても過言ではないくらいほど同じ時間を過ごした。


私も有栖と一緒にいるのが楽しかった。

だけど、ひとつ彼女には困ることがあった

それは…………

「水希、おはよっ!!」


「おはよう、有栖。」


「も〜う、相変わらず朝は弱いよねー、水希って。そういえば、今日って小テストあったよね??わたし結構ピンチかもっ。」


「朝は眠いから仕方ないでしょ。

それにそんなこと言って、有栖って私より成績いいんじゃない。」


「あはは、そうだったかなー?」


「もうっ、また私をからかうんだから。」

私たちは冗談を混じえつつ、楽しくおしゃべりしながら登校する。

そんな中、私たちの前に一人の男の子が近づいてきて

「あ……あの、渡邉さ…ん。もし、良かったら、今日の放課後……時間あり…………ますか?」


顔を下に向けながら、どうにか伝えようとしどろもどろになりながら言う男の子に私が返事をしようとすると、横で黙って聞いていた有栖が手で私を制止して、言う。


「あんたみたいな男子に水希が付き合う時間なんて1秒もありはしないの!

身の程をわきまえなさい!」


すると、勇気を振り絞って声をかけてくれたであろう男の子は泣きながら走ってどこかに行ってしまう。


それを見ていた人達は私たちには聞こえないほどの大きさの声で


「うわっ、また女神の門番が追い払ったぞ。」

「おいおい、これで何人目だよ。」

「渡邉さんに近づくことすらできねぇよ。」

「他の女子だって、門番がいるときは滅多に渡邉さんと話してるの見たことないぜ。」


次々にそういった声が聞こえてくる。


『女神の門番』


ーーーこれが私が彼女を困ると思っている部分だった。


有栖は、私と話をしたり、遊んでいる時は素直で優しく、でもどこかイタズラっぽさがある可愛く魅力的なお友達なんだけど……、ほかの人が近づいてくると、見境なく噛み付いては、私から遠ざけようとする。


中学生間では比較的マシと感じる程度だったけど、高校に上がってはじめて男の子から告白されてからというもの、彼女はどんどんエスカレートしていった。


最近は、クラスの女の子にすら私に近づいてくるなと言ってしまう始末。

そうなると当然、私とお話しようと思う人達がだんだんと減ってきて、最近は学校でも外でも有栖としか話さない日々が続いていた。



そんな、どこか息苦しくて、狭い部屋に閉じ込められたように感じていた日々が粉々に砕け散る出来事があった。



ーーーそう、私の命の恩人の彼との初めての出会いであり、殻に閉じこもるしかしなかった私が変わった出来事……電車事故だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いかがでしたか?

まさかの謎の女性は水希の親友であり、どこか水希に依存するそんな感じの女の子。


じゃあ一体二人の間に何があったのか……?

皆さんもぜひ、想像しながらお待ちください



面白い!続きが気になる!っと思ってくれた方は、応援、コメント、☆☆☆などなどよろしくお願いします!!!


それではまた次回お楽しみ!!!



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