第30話ふれあいフェスタ3日目
更新遅れてすみません!
仕事がとりあえず一段落したので更新再開します。
では、本編どうぞ!!!
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(龍星視点)
朝、カーテンの隙間からさす光がベッドを照らし俺は目を覚ます。
あの事故から5年経った今でも、右足、右腕がないことに驚くこともしばしば。
とりあえず、ベッド横に立て掛けていた装着型の義足を手繰り寄せて、神経接続をせずに足に装着する。
神経接続して動かせるのは、リハビリを重ねてあれから約半日まで伸びたが、それが過ぎると、強い痛み止めを飲んでもなかなか収まらない。それに加えて装着時間がながければながいほどより強い刺激が襲ってくることもあり、最近は時間内に外すことが主になっている。
もう慣れたが、左手のみで義足を着けるのは案外難しい。いつも、水希や紗理奈、母さん達が手助けしてくれるのだが、いつまでも迷惑をかけたくないので頑張って一人でするようにしている。
そうこうしていると、起きてから15分ほど経っていた。
そばに置いてある車椅子に手を伸ばそうとすると、部屋の扉が開き
「おはよう、にぃに。イベント最終日頑張ろうね!とりあえず先に着替えちゃおうか!」
と、Tシャツにショートパンツといったラフな格好で妹の紗理奈が俺の着替えを手伝ってくれる。
目が覚めてから何回も挑戦しているのだが、今でも1人で着替えすることが難しいためだ
リハビリにおいて、上半身の麻痺は大方とる事が出来たのだが、細かい作業や力を入れる瞬間など、今でも麻痺の影響を受ける瞬間が残っている。
「あー、そうだ。にぃにも昨日海周くんから連絡きた?」
クローゼットから着替えを選びながら紗理奈が言う。
「それなら来たよ。あの後木村さんと上手く合流して、なだめることが出来たって。」
俺がそう言うと、紗理奈も嬉しそうな表情を浮かべながら
「私も同じ感じの連絡来たよ。昨日は急に星奈ちゃんが帰っちゃうからドキドキしちゃったよ。」
「俺もだ。まあ、何事もなくてよかった。」
俺は実際のところ、なぜ彼女があの場面で泣くのを我慢したような顔で急に飛び出したのかよく分からないでいた。
だが、ほかの3人は理解してるような口ぶりだったので、俺は黙って頷くことにしていた。
「ささ、はやいところ着替えないと水希ちゃん、うちに来るから……」
「そうだね。いつもありがとな、紗理奈。」
俺の言葉に虚をつかれたような顔を一瞬して、どこか気まずそうに笑いながら
「……これくらい妹なんだし当然だよ!」
そこから、俺は妹に手伝ってもらいながら着替えて朝食を取り、水希が来たので3人で待ち合わせの駅に向かうべく、家を出たのだった。
〇〇〇
「昨日は本当にごめんなさい!!!」
俺たちが駅に着くと、既に星奈と海周が着いており、合流するやいなや真っ先に星奈が深々と頭を下げながら言う。
「いいよ、いいよ。
私も配慮が足りなかったと思うし……」
と、水希が言うと続くように紗理奈も
「水希ちゃんの言うとおりだよ。初めてのことで大変なのに、星奈ちゃんの大変さを分かってあげられなかったから……。」
とりあえず、2人の言葉に俺も合わせ
「俺からも木村さんが大変な思いしているのに気づくことができなかったから……」
「…………みんな……」
どこか涙目になりつつ星奈が言うと、彼女の方に手を乗せて、海周が言葉をかける。
「な、言ったろ?
みんな、お前のこと本気で心配してるって。とりあえず、最終日目一杯頑張って楽しもうぜ!」
「…………うん。」
そこからは、どこか恥ずかしいような気まずいような雰囲気もあったが、順調に準備に取り掛かり、どうにかイベント開催時間までに間に合ったのだった。
「「さあ、いらっしゃい!!」」
海周と星奈の声が一際屋台の中で突出して聞こえる。
───準備を終えて、星奈が
「最終日は、私最初から接客とみんなのサポートに入るよ」
その言葉に俺たちが驚いていると、
「勘違いしないで欲しいんだけど、これは無理やりじゃなくて、私がしたくてするの。
それに私の料理の腕じゃあ、より多くお客さんに喜んでもらえない。
だから、今日は近くでみんなの姿見て勉強することにするよ。」
そう言った星奈の目には昨日のようなどこか不安げな様子は一切なかった───
「じゃあ、焼きそば2つもらおうかね。」
「わしも同じもの2つたのむよ!」
「私はフランクフルトをおねがい。」
そこからは老若男女様々なお客が訪れた。
その全てが、星奈の純真無垢な天使のような笑顔に心躍らされる様子が傍目でもよくわかった。
「じゃあ、私も焼きそば1つお願いします。」
そう言うと、俺たちと同じ歳くらいの若くてどこかキリッとした目が特徴的な女性が言う。
星奈が注文を捌き、紗理奈と海周が料理をして水希がパックに詰める。
そうして、水希が注文された料理をお客に渡そうと
「お待たせしま…………」
と言おうとして、途中で止まりものすごく驚いた表情をうかべる。
「どうして…………。」
それは、先程の女性客に向けられた言葉だった。
「私も地元が近いのだから別におかしくはないでしょ?それにしても、本当に今でもその人の近くにいるなんて驚いたわ。
あなたの行いがずっと自己満足でしかないっていい加減気づいた方がいいわよ。」
そう言って一瞬俺に視線を移してお金だけを渡して、水希の手から奪うようにして袋を取り屋台を離れた。
「…………う……そ。……だって……私」
水希は酷く動揺して、身体を震わせながら自分の手で自身をさするようにしながらしゃがみこむ。
それに俺も気づき、
「水希、大丈夫か?」
水希は力なく頷き、
「えぇ…………大丈夫です。」
すると、紗理奈が自分の作業を海周に任せて
「水希ちゃん、とりあえず屋台の裏で休もうよ、ね?」
「…………すみません。」
「すまないが、紗理奈。水希を頼むよ。」
「まかせて。」
そう言って、紗理奈は水希を支えながら屋台裏の方に連れていく。
そこから、大方のお客を捌き終えるまで俺たち3人でどうにかやり遂げたのだった。
「「「何とか終わった……。」」」
最後のお客さんが注文したものを受け取り屋台をあとにした後、俺たちは思わずそんな言葉が出た。
「俺、水希の様子見てくるよ」
「そうだな。俺と星奈も行きたいところだけど……」
「いや、今回は俺だけの方がいいかも。」
「私もそう思う。後片付けは私と海周に任せて、先に水希と紗理奈と一緒に帰ってあげて。」
「そうさせてもらうよ。すまないが、助かる。」
「昨日、迷惑かけちゃったし全然いいよ。」
「そういうことだ。渡邉さんのこと任せたぞ!」
「おう。」
〇〇〇
俺はすぐに水希と紗理菜のもとに急いだ。
「……その……平気か?」
こういう時、女性にかける言葉がわからず俺はそう言ってしまう。
紗理奈は、そんな俺にどこか呆れた表情を向けるが、水希はこちらを見ると、どこか気まずそうに顔を逸らし
「……はい、もう大丈夫ですので……。」
「海周と木村さんが片付けをしてくれると言ってくれたから、早いところ3人で帰ろう。」
「その方がいいかもね。」
俺の言葉に、紗理奈も頷く。
「いえ、皆さんに迷惑をかける訳には行きませんので、今日は一人で帰ります。
龍星くんのこと、紗理奈ちゃんにお願いします。……では、これで」
と、言うと水希は一心不乱に出口へと走り出してしまう。
突然の事で、俺も紗理奈も動くことができずただただ、走り去る彼女の背中を見ることしかできなかった。
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いかがでしたか?
突然現れた女性の正体とは…………。
なぜ、水希があそこまで取り乱してしまったのか…………。
面白い!続きが気になる!!と思ってくださった方は、フォロー、コメント、✩✩✩などなどよろしくお願いします!
次回おたのしみに!!
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