第14話 恩師との再会と将来
2つ目の素敵なレビューを頂くことが出来ました。本当にありがとうございます!
皆様のご期待に添える物語をこれからも書いていきたいと思います。
では本編をどうぞ!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
水希とデートに行った翌日のこと、
その日は休日なこともあって、父の仕事が休みで家の中には、俺と父さん、紗理奈の3人がいた。
水希はなんでも、母さんと深雪さんに相談したいことがあるらしく、今日は俺の家に来るのが遅くなるらしい。
そんなこんなで、珍しく家族3人でくつろいでいたのだ。
紗理奈の学校で最近あったことや、父さんの仕事場での珍事件、俺のリハビリの話など、たわいもない話を3人で盛り上がっていた時、
家に人が来たことを告げるインターフォンが鳴ったのだ。
すぐに、妹の紗理奈が誰が来たのかを確認しに行く。
「はーい。どちら様でしょうか。」
液晶越しにそう言うと、
「お久しぶりです。西村崇(にしむらたかし)です。」
それを聞いていた、妹は誰だろう、と首を傾げていたが、近くにいた俺は驚き慌てふためていた。
なぜなら…………
西村崇は、俺が『教師』を目指したきっかけになった中学の頃の担任だからだ。
俺たちは急いで、西村先生を家に招き入れる。
事情を知った父さんと紗理奈の慌てようは本当に凄まじいものだったが。
そんなこともありつつ、西村先生は玄関を抜けてリビングに入ってくる。
視界の中に俺が映った瞬間、駆け足で近づき俺をその逞しく鍛えられた身体で覆うようにして抱き締めながら、
「......本当に無事でよかった。
こうしてまた、龍星と顔を合わせ言葉を交わせることを嬉しく思う。」
それは、西村先生の心からの喜びを表す言葉だった。
西村先生は、本当に真っ直ぐでとても強い芯を持っている強面の体育会系の先生なのだが、その面影はないくらい、目から大量の涙を流し、俺と会えたことを盛大に喜んでくれた。
西村先生が落ち着いたところで……
俺は口を開く。
「お久しぶりですね、先生。
今日はわざわざ来てくれてありがとうございます。それと、心配をかけてすみません。」
その言葉を聞き、西村先生も口を開く。
「当たり前のことだから、礼を言うことじゃない。それに、教え子のことを心配しない先生には俺がなりたくないからな。」
「……それでも、ありがとうございます。」
その言葉を聞いた先生はどこか暗い表情をしていた。
だが、俺はこの時気づくことがなく、西村先生に会った時に言わなければならなかったことを切り出した。
「それともうひとつ先生に言わないといけないことがあります。」
「……なんだ?」
「見ての通り、俺は事故で片腕、片足を失いました。それに今は歩くことすらできません。......だから、先生に約束した教師という夢を叶えることはもう……、なのでそれを謝りたくて……」
それを黙って聞いていた先生は、先程父さんたちが出したお茶を一口飲むと、俺の目を真っ直ぐ見て語りかける。
「昔、俺は君に言ったことがあるよな。
君ほど優しい奴は俺は見たことないって。
その優しさの使い方を考えて欲しい、と。」
「………………はい。」
「それで、君はその優しさをこれからの子供たちに向けたいと先生を目指すことにしたんだよね。」
俺は黙って頷く。
「では、それを含めて聞く。
君は今でも『先生』になりたいか?」
その真っ直ぐな目に俺の視線は逸らすことすら出来なかった。
「……なりたい。けど、今の俺は先生なんてできないです。」
「その身体を気にしてのことか?」
「…………そうです。」
先生はそれを聞いて、軽い感じで
「なりたければ、目指せばいい。」
俺は、その言葉に一瞬驚く。
「無理なものは無理なんですよ。
それに、俺みたいな障害者が先生になるってありえないでしょ。」
その言葉に目を鋭くしながら、先生は
「そんなことあるか。
世の中には障害を持った人が先生をやるなんて珍しくもなんともないぞ。
それに、君はいい加減その、周りの常識に縛られるの止めろ。昔から君は自分の意見よりも周りの意見を聞きまとめていくタイプだった。確かに、その力は素晴らしいものかもしれない。だけど、その力の使い方をもう一度考えるべきだ。
いいかい、龍星。これから先、君が挑戦する際に少なからず、否定的なヤジ、誹謗中傷する奴がいるだろう。
そんな時こそ、君のことをよく知らない者が言うマイナスのよりも君をよく知る者が言うプラスの意見に耳を傾けなさい。
それを踏まえて言うよ。
九条龍星、君が望むならきっと『先生』になれる。」
そのどこまでも、俺の道を照らし導く眩い大人の光に、
「もう一度……目指してもいいのかな。
こんなにスタートが遅れたのに...」
それを西村先生は、満面の笑みを浮かべ、
「そんなことないよ。
挑戦することに、早いも遅いもない。
あるのはその人がやるかやらないかのタイミングの違いだけだ。」
と言い、
どこから来たのか別の部屋に行ったはずの父さんと紗理奈まで来て
「にぃになら立派なかっこいい先生になれるよ!」
「お前なら絶対いい先生になる!」
そう言って俺の背中を押してくれる。
俺は必死に涙を堪えながら、
「…………うん。もう一度目指してみる。」
先生は頷くと、
「君が先生になるのを楽しみに待っているよ。そのときはぜひ、一緒の学校でね。」
と、笑顔で言って
「長居する気はなかったんだけどね、そろそろお暇させてもらうよ。龍星の元気な姿を見れて良かった。お母様にもよろしく言っといてね。では失礼しました。」
そう言うと、早々に荷物をまとめて、玄関に向かう。
父さんと紗理奈は慌てて、先生を見送りに行く。
玄関先で、先生が何やら、父さんたちと話してたみたいだが、何を言っているのか俺に届くことは無かった。
それでも、先生の背中を見つめながら、
もう一度夢であった『先生』を目指して頑張ろうと決意するのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかがでしたか?
今回は挿入的な感じですので少し短めだったかも。
先日、たくさんのコメントを頂き、嬉しい気持ちを感じると共に改めて、この物語で世の中の『障害』という見方を変えることが出来ればという願いが強くなりました。
ここまで読んでくださった方誠にありがとうございます。
これからも応援のほどよろしくお願いします!
では次回お楽しみに!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます