「へぇ~良くできてるね」


「あ、ありがとうございます」


僕は今こちらの漫画会社に、読み切りを持ち出していた。

タイトルは、【異世界アニメを見る資格】。

内容は、SF。アニメの放映に規制が入り、主人公がその逆境に立ち向かうといったものだ。


最初の掴みは、良さそうだ。これは連載出来るかもしれない。

そして、最後は衝撃の展開に。


「! ?」


やったぞ。驚いている。最後も驚かせれたら、これは本当にもしかするぞ。



「…読んだよ。うん良くできてるね。異世界アニメ、なろう系のアンチテーゼだね。最後驚いたよ主人公が屈するのは、斬新だね」


「はい!ありがとうござい!」


思わず、前のめりになって返事をした。


「いやぁ、本当に良くできている。なろう系に比べての話でね」


「へっ?」


「そして、これはなろう系よりも売れないね」


「…」


「絵はこの際、話にならないから割愛する。問題点が三つある。まず登場人物だ。委員が九人いるが、多すぎる。もっと言えば、ほとんどキャラがたってない。有象無象モブに権限を与えすぎ。二つ、兄目が選出した3点のアニメについて。異世界ものが2つに対し、恋愛ものが1つ。ストーリー上で、異世界もの2点が対応できず、兄目がシュガーハイスクールの現場を評価するシーン。歪だよ。主人公がアンチ異世界系に対立する立場なのに。本来は、三作品共異世界系を選出するべきだ。こっちは、君の皆無であろう恋愛遍歴が知りたいわけじゃないんだよ。よっぽど、君がなろう系を嫌いなのがわかったよ。作者の拗らせが透けて見えるなんて、まさになろう系と一緒じゃないか。司頭理壱すとりいちくん」


「黙れ! ! !」


「怒るなよ。否定しろよ。それにまだ、一つ残しているよ」


「こんな酷いことを言われて、何故、黙って聞いていないといけないんですか」


「君が、当て付けたんだろう。僕ら、編集者を流行り物しかプロデュースしない商売人と蔑み、揶揄した」


「そこまで言ったつもりは」


「商売人を蔑称じゃないと、食い下がらない時点で、否定できないよ。最後の一つを教える。」


「何故話を終らせた?」



「読み切りだからと、間抜けな考えをしているだろうから言うが、君は勘違いしている。そもそも出版漫画は商品だ。作品じゃない。読者の需要を満たすのだって、必要だ。その境地がなろう系だ。よく蔑まれているが、商業的な価値がある。片や君はどうだ?作品性を追い求めようとしているが、登場人物の粗があり、話はちぐはぐ。作品性を出す技術が足りない。身の程をわきまえたらどうだ?」


「流行りに、おとなしく乗れってことですか?」


「その方が人気が出るだろうね。なんなら君の作品とやらに出た2点の異世界もの。あれを出した方が受けるだろう」


「馬鹿にしないで下さい。人気なんて気にしてません」


「嘘だね。ここに来る時点で、何か伝えたいものがあるのに。それでいて、流行りを嫌悪している。難儀だね」


「流行りじゃないです。なろう系が嫌なんです」


「それにしたって、拗らせ過ぎだ。どうしてそこまで毛嫌いする」




「異世界転生するのは、良いです。冴えない者が何の理由もなしに能力が手に入り、モテ囃はやされる。あり得ないじゃないですか」


「ありえないを疑似体験させることは、価値ある事だ。そこに需要ができただけだ。需要の話はしたよね。需要を蔑ろにするものに漫画に関わらず、クリエイトする資格は無いと思うよ」


「だからって納得できないです。どう考えたって、もっと優れていて、面白い作品があるのに、評価されない。異世界転生・ファンタジーが許せない訳じゃない。ファンタジーって言うのは、もっと美しく魅力的なものです。想像を掻き立てられるられて、【こんなものがあったらな】と。いやあるかもしれない。そう思わせられるものだ。あり得ないが勝ったらだめだ」


「なろうの読み物だって、【こんなものがあったらな】の典型じゃないか」




「あり得ないが勝ったら意味…ないんですよ。あるかもしれない…と錯覚させられる魅力がありません。大した理由もなく最強になるファンタジーアニメを見ると、僕はアニメにつけ離される気分になる。アニメと現実リアルは違う。そんなのわかっている。だけど、そんなの関係なしに感情を揺さぶってくるのがアニメじゃないのか。少なくとも僕にとってのアニメはそうだ。冴えない人生をファンタジーの中の空想で、誤魔化す。そのなろうがドラゴンと種を越えた絆を書いているか? 新な冒険の一歩をその胸の高鳴りを描写しているか? 人と人との蟠わだかまりを経て、信頼を分かち合う結果に至っているか? あるのは、全く仮定の無い結果だけです。そんな願望、こんなものがあったらなは虚しいだけじゃないですか。何で…何で現実をねじ曲げて、理想を享受しているんだ。何の脈略もなく最強になる構図が嬉しいのか? それを肯定したら、自分は幼稚ですと白状しているものじゃないか。本気を放棄するなよ。その願望を受け入れてるこの現状がやるせない。だからこそ、この作品を作った。商品としてしか漫画を見ていない編集者つまらないものが害悪だと思うのがおかしいのか。

…あなたと話しても仕方ないですね。失礼します」


「君が思っているような人だけがなろうを見ている訳じゃない。手軽さを侮るなよ」


 その発言に構わず、強引に席を外した。引き留めたって、無視する。

別に、引き留めて欲しいなんて微塵も思っていない。あんな人を逆撫でする奴と一緒にいたくない。




 出版社出口付近のゴミ箱へと視界に入った。

これはなろう系よりも売れないね」


クシャッ


衝動的に、紙束にしてゴミ箱へ入れた。

一刻も早く離れたくて、急ぐ用事も無いが、急いだ。


 編集長

「うん?紙束が突っ込まれている。ここペットボトル用なんだけどなぁ。この紙、漫画用紙。………。ふーん。面白いね」




■■■■■■■■■■ちがう■■■■■■■■■

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■■■■■■■■■■カ/ミ■■■■■■■■■




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