第4話
僕は今、シュガーハイスクールのアニメ制作の現場へいる。
「本日はどうもよろしくお願いいたします」
「え。ああこれはどうもご丁寧に。君が兄目さんだね。アニメ制作委員会の方だね。話は聞いているよ。ご自由に見回って」
そう言って、こちらを自由に見回ることを許可された。
いや、アニメ制作委員会の権限があるから問題はないけど。
パラリと作画の用紙をめくる。
あぁ、やっぱり絵が綺麗だ。
女子高生達の何気無い帰り道の一コマ。
笑顔で他愛も無い話をしているのだろう。
この子達の笑顔を夕日越しの映像と共に見てみたい。
そう、情景が浮かぶ程に。
だからこそ、アニメにしなければならない。
「監督ちょっとよろしいですか?」
「あ、はい」
シュガーハイスクールの制作監督へお話のお願いをし、話合いをする場を設けて貰った。
「それで、話したいことというのは、僕はこの『シュガーハイスクール』をアニメ化させたいと思っています」
「えっ? いやいやご冗談を」
「本気です」
「………けど、選定結果から今回選ばれる3作はもう決まったようなものだよ」
「監督の言っていることは間違っていませんが、ただ、僕の選出した作品を僕がプレゼンすることとなりました。そのプレゼンの結果で、僕を除く委員の一人でも、認められる様になれば、僕の選出した作品全てが制作することになるんです」
「あぁ、そうなんだ」
「………何故喜ばれないのですか?」
「正直で申し訳ないけど、期待していないよ。君一人がどうこうして覆るようには、出来ていないよ。はなっから、他の委員の方は、まともに聞こうとしないことなんて簡単に想像できる。今までと変わらないよ。それに、僕達が選ばれなくても、アニメ制作用の作品を提出すれば、経営が成り立つようになっている。こんなシステムがあれば、無理に歯向かう必要なんて無いよ。悪いことは言わない。君も諦めて、自身の非を認めた方が…」
「何で…何でそんなに他人事になるんですか!」
「他人事だからだよ」
「! ?」
「君も、表向きは何とかしたいと思っていても、わかってるだろ。どうしようもないことが。君一人が味方になって、世界が変わるのかな?笑えないジョークだよ」
「じゃあ、何でこの絵は本気何ですか?」
「! ?」
「口でどう言おうが、絵は正直じゃないですか?何でこんな無駄な物作ったんですか?作らせたんですか?作らせ続けた!!」
「お前に何がわかる! ! ! !」
そう言った監督は僕の胸ぐらを掴んで、強く睨み、うつ向いた。
委員達が見せた眼光の圧をたった一人で凌駕する程の勢いで。
「ここで、アニメ用の制作をすれば、経営が約束されているんだ。これは、ある意味では、救いだ。どうせ選ばれないのなら、最低限のクオリティーで作ればいい。けど、俺だって、わかってるさ。アニメにしたいよ。そうに決まっている。じゃなきゃ、本気で作らない。藁にもすがる思いで、作っている。もしかしたら、制作委員会お眼鏡に叶うじゃないかと。馬鹿だよ。選考基準を無視して、自分達の作りたいものを作って、選ばれる訳が無い」
「なら、駄目で元々でやりましょうよ。それとも、無駄なプライドで、アニメ制作の可能性も無駄にしますか?」
「ふっ。それこそもっと馬鹿だな。よし、何を手伝えばいい?」
「一応、僕も委員の人ですからね。なれなれしいの控えた方がいいんじゃないですかー?」
「人の感情をぐちゃぐちゃにしてよく言う。俺にとっちゃアンタは客を超えて友になんただけどね。それに、脅すなら、最初にやらないと意味が無いぞ」
「はは。違いありませんね。気を取り直して、監督。可能な限り、制作選考から外れた作品の監督たちに連絡して、アポとって貰えませんか?僕が向かって、話をしたいためです。監督からの方が本気なのが伝わりますから」
「ああ、わかった。兄目」
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