第716話 (ひさしぶりに)会社いく 5
【登場人物】
川崎ばにら DStars3期生 ゲーム配信が得意
渋谷いく DStars2期生 陰キャオタ女系VTuber
Bちゃん DStars裏方兼事務職員 広報配信を担当
社長 DStarsの社長 ときどき無茶ぶりするが敏腕
【シチュエーション】
屋上で語り合ういくばに。
同じ陰キャ同士のばにらに、いくたんはなにを語るのか。
◇ ◇ ◇ ◇
い く「私もね、ばにらちゃんと同じだよ」
ばにら「……え?」
い く「ゲームが大好きで、ゲームを仕事にしたくて」
「それでVTuberって仕事を選んだんだ」
ばにら「…………え? なんの話バニかいきなり?」
い く「なんでVTuberやってるって話の流れだっただろうが!」
「どうしてそこで忘れちゃってるんだよ!」
「三歩動いたら忘れる鶏頭なのかな!」
ばにら「あ、はいはい。そんな流れだったバニですね」
い く「悩みを聞きに来たのか、からかいに来たのか」
「いったいどっちなんだよ!!!!」
ばにら「悩みを聞きに来たバニ! 来させていただいたバニ!」
「なるほど、そうだったバニですね!」
「陰キャを極めた結果、最強のVTuberになろうと……」
い く「1ミリも聞いてねえじゃねえか!!!!」
ばにら「冗談! こっちは本当に冗談バニよ!」
「すんません! 続けてください、いく先輩!」
い く「まったくもう…………!」
「もう一回言うね」
「私もゲームで食べていきたくて、この業界に入ったの」
「けど、ばにらちゃんと決定的に違うのは」
「私はゲームの世界でチャンピオンになりたいの」
ばにら「競技ゲームの世界で戦いたいってことですか?」
い く「…………うん」
「もちろん、VTuberとしての活動も頑張りたい」
「歌も、ダンスも、雑談も、できるようになりたい」
「けど、一番になりたい、極めたいのは、ゲームなんだ」
「中途半端じゃそこは終われない」
「絶対に一番になってみせる……」
「うぅん、ならなくちゃって思ってるの!!!!」
ばにら「いく先輩……!」
い く「だからね、かりんちゃんに柄にもなく嫉妬しちゃった」
「会社に認められて、世間的にも認められて」
「トップゲームVTuberとしての階段を」
「こんなにもお膳立てしてもらえて……ずるいよってね?」
「へへへっ、私、悪い先輩だね」
「ごめんね、ばにらちゃん」
ばにら「なにも間違ってないバニよ! いく先輩!」
い く「!!!!」
ばにら「やりたいことをやりましょうよ!」
「みっともなくてもいいバニですよ!」
「野心も嫉妬もガンガンして!」
「自分の理想に向かって突き進みましょうよ!」
「ばに~らたちは誰かのご機嫌をとるために」
「VTuberをやってるわけじゃないバニですよ!!!!」
「自分の夢を叶えるために、この仕事をしてるんや!」
い く「ばにらちゃん……!」
ばにら「いく先輩はVTuberでゲーマーのトップをとりたい」
「ばに~らも配信者としてもっともっといろんなことがしたい」
「自分のやりたいことを、誰にも文句を言われずに」
「やれるような強い人間になりたい」
「自分の挑戦が、なにかに挑もうとしている人間の」
「心の支えになれるようなことをしていきたい」
「そう思っているバニよ!」
「いく先輩も同じ気持ちと違うんか!!!! そうやろ!!!!」
い く「うん! 同じだよ、ばにらちゃん!」
「私は、私のまま! VTuberとしてやりたいことをしたい!」
「ただそれだけ……! それだけなの……!」
ばにら「だったら! やってやりましょうや!」
「ばに~らといっしょに! 見せつけてやりましょうや!」
い く「…………うんっ!!!!」
???「ひゅう! もうそろそろ冬だっていうのに、熱っちぃ屋上だぜ!」
ばにら「…………はえ?」
い く「…………え? 給水タンクの上に人が?」
???「お前らの気持ちはよう、聞かせてもらったぜ」
「そうだよなぁ! VTuberなんてよぉ!」
「伊達や酔狂じゃできねえよなぁ!」
「人間としての歯車ねじ切れてないと、やれねえお仕事だよなぁ!」
ばにら「…………お、お前は! 新潟おこめ!」
い く「おこめちゃん⁉」
???「おめえらの熱い気持ち、アタシの胸にじんと響いたぜ」
「いくたん! ばにら! どうかアタシも仲間に加えてくれ!」
「VTuberとしてアタシも、歌でテッペン取りたいんだ……」
ばにら「…………ぇ、ぁ、どうする、いく先輩?(もじもじ)」
い く「…………ど、どうしよっか?(もじもじ)」
おこめ「ちょっ! こらぁっ! このタイミング陰キャ発動すな!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
VTuberとしての夢と心意気をぶつけ合うばにらといくたん。
ふたりとも自分たちがなんのためにこの仕事をしているのか――それを見つめ直すいい機会となったのでした。初心って、忘れちゃいけないよね。
そして滑る新潟おこめ。大事故である。
流石はPONの総大将の百合営業相手。
さて、ばにら&いく&おこめという、奇妙な組み合わせができあがったわけですが……これが意味するところはなんなのか? ばにらの場所にいるのは、元ネタ的には……じゃないのか? 元ネタについてある程度理解のある方は、今後の展開がもしかすると読めたかもしれません。ということで、そろそろ今回の章の主役の話に戻していきましょうか。引き続き、ぜひぜひ評価・応援・コメントよろしくお願いいたします。m(__)m
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