第714話 (ひさしぶりに)会社いく 3

【登場人物】

川崎ばにら  DStars3期生 ゲーム配信が得意

渋谷いく   DStars2期生 陰キャオタ女系VTuber

Bちゃん   DStars裏方兼事務職員 広報配信を担当

社長     DStarsの社長 ときどき無茶ぶりするが敏腕


【シチュエーション】

FPSゲー界隈では有名人のKMTにいくちゃん反応する。

彼女もかなりのガチ勢だが……はたして二人はこれからどうなるのか?


◇ ◇ ◇ ◇



い く「会社の方針は分かった」


   「企業所属のVTuberだから」


   「別に文句を言うつもりはない」



   「けど、KMTちゃんに負けてるって思われてるのは」


   「私もAPEX配信やってる身としては、ちょっと看過できない」



ばにら(おぉっ! いく先輩、いつになく強気バニよ!)


   (そうバニよね! いく先輩もAPEXガチ勢バニですもんね!)


Bちゃ「もちろん、私たちもいくさんが」


   「かりんさんに負けているとは思っていません」


   「かりんさんの能力は主に陣頭指揮突出しています」



   「個人戦闘能力という点で考えれば」


   「実力はいくさんの方がおそらく上でしょう」



い く「はぐらかさないでよBちゃん」



   「事務所はAPEXの大会に」


   「私たちじゃなくてかりんちゃんを推すんだね?」



ばにら(ずばり聞いちゃったバニよ!)


   (けどまぁ、そういうことバニよな……!)



Bちゃ「そうですね、かりんさんと彼女と相性のいいメンバー」


   「それをDStars公式チームとして」


   「大会への参加をしていこうと考えています」


い く「私になんの話もなかったってことは」


   「かりんちゃんと相性がよくないと判断された」


   「そういうことだと捉えて問題ないよね?」



Bちゃ「…………はい」



ばにら「ちょっ! ちょっとちょっと! 空気が重いバニよ!」


   「いく先輩! いったん、落ち着きましょうバニな!」


い ま「そうだよ、いくちゃん! 深呼吸して!」


   「Bちゃんも、ちょっと言葉にトゲがあるから!」



Bちゃ「さきほども言いましたが」


   「いくさんのAPEXのプレイスキルは」


   「間違いなくDStarsで上位に入ります」



   「けれども、基本的にいくさんはソロ配信」


   「野良のプレイヤーと組んで戦っていますよね?」



い く「誰とでもうまくコンビネーションが取れる」


   「そうは考えてくれないんだね?」



Bちゃ「大会は基本チーム参加です」


   「一般プレイヤーとのゲームとは本質が違うんです」


   「チームメンバーとの適切なコミュニケーションと」


   「以心伝心で動けるようになる地道なトレーニング」



   「それは、そう易々と得られるものではありません(断言)」



ばにら「いやいやいや!」


   「な~に言ってるバニか、Bちゃん!」


   「あのかりんちゃんバニよ! コミュ力皆無の!」


   「陰キャのいく先輩とどっこいどっこいバニですやん!」


   「そんな言うほど変わりませんて!」



い く「ばにらちゃんは黙ってて(圧)」


ばにら「バニぃッ⁉」



い く「ごめんね。けど、コミュ力についてはBちゃんの言う通り」


   「私もKMTの動画を追っかけていたから分かる」


   「ことゲームにおいて、彼女の状況把握・指揮能力」


   「そしてメンバーへの伝達能力は神がかってる」



   「私はその真逆」


   「連携ができないから個人スキルに極振りして」


   「なんとかAPEXで戦えているタイプなの」



   「だから、Bちゃんの分析は真実よ」



ばにら(はえ……そんな違いがあったバニか)


   (ばに~らは、バトロワ系のFPSは普段やらないから)


   (ぜんぜんそんな感覚が分からなかったバニ)



い く「Bちゃん、もうひとついい?」


   「私、前からDStarsで大会に出たいって言ってたよね?」


   「うちには戦えるメンバーがそこそこいるから」


   「その人たちと組んでやりたいって」



   「そのリクエストに対する会社の答えが」


   「今回のかりんちゃんの採用なんだね?」



Bちゃ「そういうことになりますね」


   「ちなみにかりんさんのチームには」



   「だいさんじのAPEX大会にゲスト出場経験のある」


   「祇園ちまきさん」



   「同じく、ストリーマー勢の大会で準優勝まで行った」


   「丹後ひじりさん」



   「このメンバーでの参加を考えています」



ばにら(これは流石に、Bちゃんもはっきり言い過ぎバニよ)


   (連携が取れないから、いく先輩は使えないだなんて)



   (なんだかちょっと、いく先輩が可哀想になってきたバニ……)



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



公式から戦力外通告を受けてしまういくちゃん。

なかなか、自分の意見を通してもらえずに、他の人の意見がするっと通るというのは、人間というか社会人やっててつらいものがありますね。なんで向こうの甘い案は通って、こっちは通らないんだとか……。


もちろんそこにはやはり、厳然とした審査基準があるわけなんですが、それでも「そこで納得するようならこんなことやってない」ってものがあるわけです。


陰キャだけどもいハングリー。DStarsの隠れた狂犬枠のいくちゃん。Bちゃんから言い渡された戦力外通告に、彼女はどう動くのか。そして、かりんちゃんとどう関わっていくのか――気になる方は、ぜひぜひ評価・応援・コメントよろしくお願いいたします。m(__)m

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