第18話 開店時期が決定

 父さんは1年後って言ったはずだけど、なんで来月?


「このゲームは多くの人が虜になるでしょう。どこからでもお店に行きやすいように、街の中心地に作りましょう。幸か不幸か、中心地の家は空き家が多いですし、いま住んでいる人もゲームを教えてあげれば家を明け渡してくれますよ」


 段々と規模が大きくなっている気がする。このままだと、本当に住んでいる人を追い出して、ゲーセンのために土地を確保しそう。え? そしたら1ヶ月までに開店できるようにしないといけないの。


 興奮するフランクさんに、父さんが待ったをかける。


「住民を追い出すことはできないので、お店は、土地が余っている場所に建てる予定です。それに、ジャンのスキルはまだ未知数な部分があるので、それを調べてから開店するので、1年後ぐらいに」


「土地が余っている場所なら、拡張もしやすいですね。さすが領主様です。ですが、開店時期については、遅いです!」


 ダンと机を叩くフランクさん。


 落ち着いてください……。


「1年後なんて知ったら、今度は暴動が起きますよ」


 え? これ以上の?


 いまだに聞こえる「お金、お金」よりもすごいのが?


「いいんですか? 住民全員が、毎日ここに来て叫ぶのです。開店しろ、開店しろ……と」


 静かで、聞いているものを圧倒するフランクさんの語り。


 説法で鍛えられているせいか、フランクさんの言葉には説得力がある。


 父さんも同じ考えなんだろう。生唾を呑み込む。


「わかりました。なるべく早くゲームセンターを開店します」


 父さん!? なにを言ってるの!?


「ジャン、やれるな」


 父さんはガシッと俺の肩を掴む。


「いいよな、ジャン」


 ギリギリと肩を掴む手に力が入る。


「う、うん」


 それしか言えないよ……。


 俺の言葉に満足すると、フランクさんは部屋を出て行った。


 と思ったらすぐ戻ってきた。


「管理者にさせてください」


 忘れてた。


 管理者にするには、頭の中で「フランクさんを管理者にします」と考えると、フランクさんの手に小さな鍵が現れた。


 筐体の鍵だ。


 これで中のお金を取り出すのか。


 使い方を説明する。


「さっそく戻ってやってみます」


 鍵を見つめて笑顔のフランクさんを見て、ふと疑問に思う。


「お金はどうするの?」


 誰が何回やったかなんてわからないだろうし。


「それはみなさんに返しますよ」


「みんなが何回やったかわかるんですか?」


「もちろんです。私は記憶力がいいんです。そのぐらいなんでもありません。むしろ、教典を覚えるのが大変ですよ」


 ジョークなのだろうか、フランクさんは笑う。


「さて、今度こそ帰らせてもらいます。ゲームセンターができることをさっそく伝えたいので」


 開店が待ち遠しくてウキウキのフランクさんに対して、俺と父さんは苦笑するしかなかった。


▼▲▼▲


 暴動(?)も無事収まり、俺は自分の部屋に戻る。子ども部屋にしては少し広めの部屋だ。とはいえ、ベッドもテーブルも勉強机、さらに洋服ダンスなどもそろっているから、狭苦しく感じる。


 ベッドに倒れ込むと、そのままベッドに沈み込むように感じる。


 今日は思っていたよりも疲れていたみたいだ。


 まあ、いろいろあったもんな。


 でも今日はもう寝るだけ。


 お休み……。


 ドンドンとドアが鳴る。


「ジャン、お金がなくなっちゃたの。私も管理者にして」


「ここは兄である私が管理者になってしっかりとお金を管理する。ジャン、だから私を管理者に」


 ドンドン。


 このあと、兄さんと姉さんも管理者にした。

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異世界ゲームセンターは今日も大繁盛 桜田 @nakanomichi

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