第15話 俺にできることはないだヴィヴィ

「ケヴィン様、次私がやっていいですか?」


 ヴィヴィがさっと硬貨を取り出して、投入口にいれようとする。


 ガシッ、ガシッ、と姉さんと兄さんがヴィヴィの腕を掴む。ヴィヴィの腕をギリギリと締め上げる。


「ヴィヴィ、それは私にくれると約束したわよね」


「ヴィヴィ、これは領地運営に関わることだ。まずは私が確かめる」


 真顔の二人の表情。一切の感情が抜け落ちた顔。


「すみませんでした」


 陽気で朗らかで、仕事でミスしても落ち込むことがないヴィヴィが、恐怖で青ざめている。


 一転して表情を柔らかくした姉さんと兄さん。


「いいのよ。ミスは誰にもあるもの。それじゃ、硬貨は貰うわね」


「失敗は成功のもと。これから間違わないようにすればいい。ヴィヴィは父さんたちの様子を見てきてくれ」


 姉さんは素早い動きで硬貨を取ると、レッドオーシャンの元へ。兄さんは硬貨の山から一枚をクレーンゲームに。


 ヴィヴィは、助けを求めるような目を俺に向ける。その目はうるうるとしており、いまにも泣きそうだ。


 あのヴィヴィが……そんなに怖かったのか。


 とはいえ俺にできることはない。諦めて、兄さんの言う通りに、父さんたちの様子を見にいってくれ。


 そういう思いを込めてヴィヴィを見る。


 ヴィヴィは落胆した様子で、部屋を出ていく。


 姉さんの罵声と嬌声、兄さんの落胆と歓喜の声が響く中、俺は心を無にして父さんたちが来るのを待った。

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