第13話 ツンツン兄さんは可愛いもの好き?
ドアが開き、兄さんのケヴィン =ヴィエイラが入ってくる。涼しい目元に薄い唇の美男子だ。あまりに整いすぎて、近寄りがたい雰囲気が漂っている。髪色は俺に似て赤みがかった黒色で、母さん似のストレートな髪を短く刈りそろえている。
「あれ? 父さんと母さんは」
「お前が祝福を受けている間にまとめた書類を確認してもらっている。母さんは父さんの見張りだ」
ぶっきらぼうに言い放った兄さんは、ドカッとソファーに腰を下ろす。足を組んで、背中を預ける。
「それで、あれはお前のスキルか。確かに、驚くほどおかしなものだな」
兄さんはゲームに目を向ける。言葉とは裏腹に、あまり驚いていないように思える。
まあ、兄さんは冷静沈着っていう服を着ているような人だからなあ。それに、父さんからもすでに話は聞いているだろうし。
「それに、王都のギルドにあるステータス板にも似ているな。材質の光具合が」
「なにそれ?」
兄さんはおっくうそうに説明する。
「手をかざした者のステータス……スキルを表示する板だ」
「へえ。スキル画面で使用者にしか見えないもんね。そんなのがあるんだ」
「それを出せるスキルがあったらしい。まあ、そのスキルもかなり昔に出たきりで、新たな保持者はいないみたいだがな」
なるほど。筐体と似た材質の板か……これも地球産っぽいな。
兄さんはゲームをしているヴィヴィの様子を見る。そして、ふむと頷く。
「あれなら、人を集められるな。教会でもすごかったんだろ?」
「おかげでこんな時間だよ」
「そうか」
素っ気ない態度の兄さん。兄さんは俺に対して、いつもこんな感じだ。二年ぐらい前までは、普通に話してたんだけどなぁ……。
「ゲームというのはどのぐらい出せるんだ? 種類は?」
「それなんだけど、出せるゲームはいまヴィヴィがやっているレッドオーシャン。あとはクレーンゲームだね。数はよくわからないな」
「よくわからない? スキルに聞いてもわからないのか?」
「そんななんでもかんでもスキルに聞くとわかるもんなの?」
教会でもそうだったけど、スキルに聞けばなんでもわかるの?
兄さんはため息を吐くと、淡々と答える。
「わかる。スキルに聞けば大概がわかる。わからないとすれば、そのスキルへの熟練度が足りないんだ。教会で説明されるぞ」
されたかな? もしかして、ゲームに夢中で忘れたんじゃないの?
「また怠けて聞き逃したんだろ。やってみろ」
兄さんは目で促す。
さっそくスキルに意識を向ける。何台出せるのか、と。
感覚で理解する。何台出せるのか。
「いまのところ、台数に制限はないみたい」
兄さんは、小さく嘆息する。
「それはすごいな。それで、レッドオーシャンがあれなら、クレーンゲームっていうのはどういうのだ。出してみろ」
顎で空いているスペースを示す。
「はいはい」
俺はそういう態度にはなれているので、適当に相づちを打って、スキルを発動する。
「クレーンゲーム召喚」
地面に魔方陣が現れる。教会のときと同じだ。魔方陣が発光し、光が消える。
そこには、クレーンゲームが。二人がプレイできるタイプ。商品はぬいぐるみだ。
どんなぬいぐるみかと思ったら、地球にいる動物のぬいぐるみだ。猫に犬にパンダにライオン。猫や犬はこの世界にいたと思うけど、パンダやライオンは見たことないからわからないな。
そんなことを考えていたら、背後から奇声が上がる。
「はぅわ!」
振り返ると、兄さんが口に手を当てている。ゲームをしていたヴィヴィと姉さんも、思わずといった様子で兄さんを見ている。
「いまの声、兄さん?」
俺の言葉に、兄さんの耳が真っ赤になる。
もしかして、このぬいぐるみを気に入った?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます