第5話 幼なじみのトリオ
「あ! ジャンやっと来た!」
3人のうち唯一の女子であるリディー。
「おっせーな。こういうときも、のんきだな」
「おーいこっちこっち」
ぽっちゃりのアシルとひょろっとして背の高いアルマンが、突っかかってくる。最初に言ったほうがアシルで、次がアルマンだ。
肩車から降ろしてもらった俺は、リディーたちのところに行く。
「ジャンはいつも通りだね。緊張しないの? 俺、昨日まったく寝られなかったよ」
アルマンが言う。その顔はこわばっていて、緊張しているのがわかる。
「だよな……」
アシルがうんうんと頷く。
言われてみると、アシルとアルマンの顔色は優れない。
「あんたたち本当に緊張に弱いわね。私はバッチリ睡眠取れたから、今日は完璧よ!」
胸を張るリディーの目の下にも、うっすらとクマがある。
アシルが張り合うように声を上げる。
「そ、それだったら俺も! すぐ寝た!」
そんなアシルだが、目の下にはくっきりとクマが出きている。
やっぱりみんな緊張しているんだな。俺は気楽だ。スキルはなんでもいいんだから。
「まあ、どんなスキルだって、どうにかなるでしょ」
緊張を和らげようとそう言うが、アシルとアルマンの顔色はより悪くなる。
「俺は冒険者になりたいんだよ。なのに算術スキルなんてもらったら……もう無理」
「そうだよ! 僕たちドラゴンの両翼は、国一番の冒険者になるんだから」
前にもそんなこと言ってたけど、マジだったのか。そこまで思っているなら、いいスキルが当たるといいな。でも、ドラゴンの両翼って、どんな中二だよ!
「私は料理スキルがほしいな」
「じゃあお店継ぐの?」
「もちろん! いつかは王都にお店を移すんだ。そして貴族の方たちや格好いい冒険者を相手にして、休みの日はいろいろなお店を回るの……」
リディーは将来を思いうっとりとした表情を浮かべる。
リディーの家は庶民は食堂じゃん。王都で店を出しても貴族は来ないでしょ。
「ジャンはどうなの? どんなスキルをもらいたいの?」
リディーが聞いてくる。
俺は親指を立ててグッドサインをする。
「なんでも!」
俺の答えに、リディーたちはつまらなそうにため息を吐く。
「前から言っていたけど、変わらないんだね」
「だから言ったじゃん。こいつには向上心がないんだよ」
「どうせ領主一家だから困らないと思ってんだろうな。まあその通りだろうけど、夢もなにもないとは」
こそこそと言うんじゃない! 別になんでもって言ったけど、そりゃあ将来兄さんたちの役に立つようなスキルだったらいいよ。でも、あまりにもいいスキルだと、それはそれで面倒くさいんだ。気ままにゆっくりとした生活をしたいの俺は。
聖者や賢者、聖騎士のスキルなんてもらったら、教会に入らされてしまう……。そしたら、一生教会のために働かされる。
俺たちがそんな話をしている間、父さんと母さんは周りには人が集まっていた。そして姉さんも同い年の女性たちと集まって、楽しそうに会話している。
リディーたちもそうだけど、領主一家と領民たちの距離は近い。前世は普通の高校生だったから、このぐらいの雰囲気が心地よい。
だから、将来もこの地にいたい。
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