第二章は物語のキーパーソンとの出逢い
自分は部屋のベッドに寝転んでいたのに、
変わった本を開いたら図書館にいた。
今起こったことを頭で考えてみた。
すごいファンタジーな話だった。
こんなことって本当にあったんだ。
あっ、これはもしかしたら夢かもしれない。
ほら、夢オチとかって言うじゃん。
自分の感覚的に夢ではないと思ってるけど、
念のためにほっぺをつねってみる。思いっきり。
「いたいっ、夢じゃないんだ…」
夢じゃないとわかっても、怖くはなかった。
むしろ少しワクワクしてる。
こんな映画みたいなことあるんだ……って。
周りに人はいなくて、物音は全くしない。
自分はどうやらこの図書館の通路にいるのかな。
そして、本棚が両脇にたくさんあって、
遠くまで目を凝らしてみても、
同じような景色ばっかりだった。
出口らしきものは1つも見当たらない。
何かここの手掛かりになるものはないかな。
そう思って、本棚を観察してみる。
注意を向けると、
本棚の側面に説明文のようなものがあった。
何かの数字と……伝記?
伝記の本棚の右隣の本棚を確認してみても、
そこには同じ数字と伝記の文字。
でも、どうやら本はちゃんと違うみたい。
背表紙を見てそれは分かった。
伝記の本棚とは反対側の本棚を確認してみる。
反対側も伝記だった…。
「伝記、多すぎない?」
思わずそう呟いてしまった。
だって、その伝記の本棚もすごい横長なんだ。
一体伝記だけでどれだけの本があるんだろう。
もしかして自分は
伝記の図書館にいるのだろうか?
そもそも、伝記って何だっけ…?
すごい人のすごい物語とかだっけかな。
なんとなくわかるけど、
説明はできないことってよくないかな?
というか、図書館ってだけでも
自分はあまり好きじゃないのに…
本好きの両親だから、図書館や本屋には
よく連れてこられたんだ。
悪い思い出はないけど…良い思い出もないんだ。
そんな風に自分が回想していた時だった。
「悪かったわね、伝記ばっかりで。」
女の人の声が聞こえたんだ。
声はなんだか落ち着いてる感じで――
「え、なになになに!?」
驚かないで聞いて欲しいんだけど、
自分が勝手に移動してるんだ。
それも電車くらいの速さで。
きっと本当に電車の速さだと、
自分の体はもたないだろうから違うだろうけど、
本当にそれくらいの速さで、動いてるんだ。
さらに、自分は足を動かしていないのに。
例えるならまさに、千と千尋の神隠しの、
千尋が湯婆婆に連れてこられるシーン
そのものだったんだ。
どうやら自分は目をつむっていたみたいだった。
いつの間にか勝手な高速移動は終わっていた。
目を開けると、目の前には女の人が座っていた。
恐らく、さっきの声の人だろう。
この女の人がいる場所だけは、空間が広かった。
本を読むスペースなのかな。
女の人が座っている椅子は高級そうな
シングルソファで、側には小さな丸い机がある。
机の上には本が1つ置いてあった。
自分は周りの景色から、女の人に目を向けた。
服装は、なんだろう、見たことがなかった。
スーツのような、軍服のような。
その服の色は濃い茶色や藍色、黒が主だった。
髪は長くて、
腰くらいまでありそうな藍、黒……?
まあそんな感じの色だった。
自分がまじまじと見つめていると、
彼女は口を開いた。
「初めまして、こんにちは。
早速だけど貴方、本は、好き?」
「いえ、嫌いですけど…。」
思わずそう呟いてしまった。
こんな場所にいて、
本を読んでいて、
この見た目。
本が嫌いなわけはない。むしろ、大好きだろう。
女の人の眉間には、しわができていた。
どうやらファーストコンタクトは最悪らしい…。
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