図書館のアウトサイダー

伊砂リオテ

第一章は主人公の解説

 自分は至って普通の学生だ。

 高校生で、部活をしていて、家族もいて、

 金銭的にも恵まれてると思ってる。

 普通は幸せに暮らせるのだ。

 自分をあごで使う奴さえ居なければね。

 始まりはパシリにされたんだったかな?

「おい環、ジュース買ってくれよ。」

 そんな風に辰野から言われた筈だ。

 自分もそれくらいなら大丈夫って思って、

 何度か辰野の言う通りにしてた。

 でもあごで使うっていったって

 最初はなんてことなかったんだ。

 いや、それがよくある流れなのかもだけど。

 もう今は、本当に色んな雑用をされてる。

 暴力はされてなくてひと安心――じゃなくて。

 辰野の変わりに

 1日分のノートをとることになった時は

 本当に、大変だったんだ。

 段々と辰野の要求はエスカレートしていって

 最近は学校に行くのが億劫なんだ。

 だから金曜日の学校を休んじゃって、

 自分で三連休にしてるんだ。

 月曜日のことは考えたくない…。

 その程度でどうしたって思われても、

 自分にとっては凄く大きいことなんだ。

 だから、あまり悪く思わないで欲しいと思う。


 自分の家は、よくある一軒家なのだけれど

 他の家と違うところは書斎があるんだ。

 お母さんもお父さんも、読書が大好きだからだ。

 自分が小さい頃はよく色んな本を勧められた。

 でも、自分は本が嫌いなんだ。

 文字ばっかりだし、難しいし、退屈なんだ。

 それなら、映画とか漫画とかドラマを見た方が

 絶対に良いと思うんだ。

 そういう訳だったんだけれど…

 自分がお母さんに今日は休むことを伝えたら

「ならしっかり休んでおくのよ。くれぐれも、

 漫画とかテレビはやめなさいね。」

 実はこっそり映画を観ようとしてたのに…。

 流石にお母さんを裏切るわけにはいかないよね。

 だから自分は本を書斎から

 持っていくことにしたんだ。

 本は駄目なんて言われてないからね!

 そして今、その持ってきた本を

 自分の部屋のベッドで

 読もうとしているんだけど……

 なんだろう、すごく難しいぞ?

 机の上に一冊置かれていたやつを

 持ってきたんだけど、

 たぶんお父さんとかが読んでたのかな。

 こんなのだと、全く読む気が起きないよ。

 だから自分は、

 もう一冊くすねてきた本を読もうとする。

 すごく古めかしい本で、中世にでもありそうだ。

 ここで、自分はおかしな点を見つけた。

 本のタイトルが何処にもかいてないんだ。

 でもまあそれはそれで、興味が沸いてくる。

 最初から読む気はなくて、

 本の中心辺りを適当にガバッと開いてみる。

 ページに書かれているのは

【ようこそ】だけだった。

 しかもそれが、本の中心に、でかでかと。

「どういう本なの、これって。」

 思わずそう独り言を呟くと――

 本が光りだしたんだ。

 馬鹿馬鹿しいよね、

 自分も有り得ないと思ったよ。

 でも本当に光ってるんだ。

 その光はどんどん強くなっていって、

 目に入れられなくなってくる。

 思わず自分は目をつむる。

 なんだろう、

 なんだかこういう展開を知ってるぞ。

 きっと、きっと目を開けるとそこには――。


 自分の想像通り、周りの景色は

 見慣れた自分の部屋じゃなくなっていた。

 どうやら、自分は図書館にいるみたいだった。


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