第49話 『レイド』

049 『レイド』


一週間の時間はあっという間に過ぎていく。

俺は、安物の皮鎧を性懲しょうこりもなくきている。

高いものでも買うことができるようにはなったが、そのためには、深深度の物質を売る必要がある。それを出せば、だいたい自分がどこら辺の階層を潜っているかを明かすことになる。それが嫌だったからだ。

しかし、この男は少し残念な思考形態を持っているに違いない。

自分が売るからばれるのであるが、他人が売ればその心配はないのだからそうすべきなのだ。


俺は、30階層踏破を達成し、本当ならば金級冒険者へと昇格できるのだが、それは伏せていた。本当の事を話すとたいへんなことになりそうだったからだ。


この世界にはないカード召喚スキルを使い迷宮を一人で踏破していくなど、他人には決して言えない。少なくとも、信頼できない人間には特に。


今回の領主の勝手な思い付きレイドには、白金級冒険者が都からやってくる。

目指す階層は45階層程度なのだ、当然だろう。


俺は、大きな背負子に食料、医薬品、寝具などを大量に背負う荷役を命じられている。

基本的には、戦闘に参加しないが、嘘か誠か、経験値の一部は入るから有難く思えと言われている。


<戦闘に参加していない場合に、経験値は入りません>カナタさんが完全否定されておられる。


都からきた、白金級(プラチナ級)冒険者は、都でも有数の悪名高いクランの冒険者達だった。いわゆる札付きの悪だが、腕はたつみたいな野郎達だった。

レベルはおそらく50近いだろう。

どのような方法を使ったかはわからないが、彼らの数値は本物のようだ。

この世界では、数字が全てだ。


作戦は至って簡単で、彼らプラチナ級冒険者(死神の鎌という名前のパーティーだ)を先頭に、この町の上位冒険者たちが徒党を組んで、下の階へと進軍していくというものだ。

30階層までは、登録を済ませているこの町の金級パーティーにより、転移し、そこから攻略を開始する。金級パーティーに取っては、40階層を登録するチャンスでもあるわけだ。


俺たち、銅級冒険者も多くが荷物持ちで参加している。

カードに収納すれば、20枚程度で済むものだが、背負子の荷物は山のようになっている。

俺だけは、必死で重い振りをしなければならなかった。

何故なら、軽いからだ。俺の力からすると。

他の銅級冒険者は本当に必死で背負っている。


「では行くぞ、荷物持ちは遅れるなよ、それとふらふらと離れたたら、食われるからな」

死神の鎌の一人がいう。

にやにやしている所をみると、そうなった方が面白い位に考えているのは明白だ。


彼らの装備はやはり、金が掛かっている。

鋼鉄製の製品を使っている。飾り彫なども施されている少し豪華なものである。

都には腕のいい鍛冶屋もいるのだろう。

ただし、こんなやつらに売るのはどうかとは思うがな。


「おい、そこの野郎、とっと動け」俺に向けられた怒声。

「へい、旦那、分かりやした」俺は立ち上がった。


休みなど必要なかったが、他の荷物持ちがそれを必要としていたのだ。

三下のような口ぶりの方が目立たないのではないかと、このような口調にしている。

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