第48話 ネームドモンスター

048 ネームドモンスター


カードドローがたまっている。

というか、そもそも、女神のギフト的に50枚追加されているのだった。

土地のカードをセットすれば、攻撃力や防御力をアップさせることが可能なのだが、既にそんなことは、頭の片隅にもなかった。(作者すら忘れていたのだ)

カナタですら、忘れていたようだ。

エクストラドローが凄すぎて、霞んでいた。


なんだか、もういらない気がする位だ。

一つ間違えば、俺は簡単に冒険者を殺してしまえる。

これ以上強くなるとか正直ヤバいぞ。


しかし、これもまた宿命、カードを引きたい。

思い出したからだ。そもそも、俺はTCGプレーヤー、カード集めは宿命のようなものだ。

「ではドローをお願いします」と礼儀正しくする俺。モンクレであることを隠そうと必死である。

<ドロー>

キラキラン「火の土地」

<ドロー>

キラキラン「金の土地」

火の土地と金の土地をセット。

これで攻撃力が10%、防御力が10%上昇する。


よし、思い通り土地のカードを引いた、これで終了だ。

その時、何かが、俺の直感を揺さぶる。

「これは!」眉間の間に、稲妻のような何かが走る感覚。

ピキピキンという何かの音。


いや、俺はニュータイ〇ではありませんから。無理なことをさせないでください。


それは、ドローを続行せよという、神からの啓示?

いや、やめようよ。なんだか俺の俺強え~無双が台無しになるばかりなんです。

俺がもっと、激しく戦って無双したいんです。


俺の出番と活躍がドンドン失われているんです。


<ドローしますか?>とカナタ。

「いえ、しません」

<ドローしますか?Y or N>

「だからしないって」

<ドローしますか?Y or Y>

「ええい、うるさいわ。何でそんな何だよ」

<ドローしますか?Y or Y or Y>

「何だそれは?もういいわ!」

キラキラン

「しまった!」もういいわ!が肯定に取られてしまう。

日本語によくある表現。

詐欺師のよくやる奴だ。


いわゆる「結構」発言問題である。

「もう結構だ」と発言すると、発言者はいらないと表現しているのだが、詐欺師は「結構」=「いいです」といってくれたというのである。


『ちょとだけSRアルテリオス(ミノタウロス)LV13』


ちょっと待て!何だその、ちょっとだけSRというのは!

しかも括弧ミノタウロスというのは!

彼は、少し前に、肉として捌かれたのでは?


「カナタ!」

<おめでとうございます、ジンさま。大変貴重なカードを得ることができました>


「いや」

<この、ミノタウロスは『ネームドモンスター』に当たります。>

「ちょ」

<『ネームドモンスター』は特殊個体になり、他のモンスターよりもかなり強くなります>


どうしても、クレームを受付しようとしないカナタさん。


アルテリオス召喚。

すると召喚陣から、2mのミノタウロスが現れる。

筋肉質のごつい牛頭のミノタウロスである。

やはり目が赤く光っている。不気味だ。

「ママ」

だが、ミノタウロスがこういう。

「違うわ!俺は男だ」

「パパ」


「だから、違うだろ~!」


行く先を失った、いや捌かれたはずのミノタウロスは何故か、復活した。

モンスターカードとして。

しかも大変珍しい、ちょっとだけSRカードである。

これは、製造過程で間違って印刷された品ものなどが市場に出回った時に発生する、希少品扱いなのだろうか?

本当にそれでよいのだろうか。


こうして、力強い味方、ちょっとだけアステリオスを得ることができたのでるあ。


めでたしめでたし。

え?違う?

・・・。





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