第47話 クレーム処理係
047 クレーム処理係
そもそも、エクストラとは余分なという意味がついている。
つまり、そもそもない物があったから、エクストラなのである。
それをあたかも、あるはずのものがないというのをクレームと言わざるとして何という。
仕方がないので、そこらへんにあったものを与えてお客をなだめるしかない。
近ごろは、何にでも文句をいうお客をモンスタークレーマーと呼ぶ。
お客からの攻撃をカスタマーハラスメントと呼び、カスハラと省略して呼ぶ。
日本人はとにかく省略して呼ぶのが大好きだ。
モンスタークレーマーの追及に国民的美少女の「鮎川奏」顔のカナタが、
<はい、エクストラ・ドローカードは出ませんが、トラップカードぐらいなら問題ないと思います>そう答えたのである。
「本当に貰っていいの?」
<はい、今回は特別だと考えてくださいね。エクストラ・ドローは本来ありませんのでご了承ください。>
「わかりました、ご迷惑をおかけします」と俺。
<トラップカードセットを進呈します。落とし穴10枚、毒の矢10枚、宝箱セット用爆弾10枚、痺れ薬10枚、即死毒(モウドクフキヤガエル系)10枚、即死毒(テトロドトキシン系)10枚、即死毒(トリカブト系)10枚・・・・・・・・>
「えええ」
初めの方はまともなカードだったのだが、即死毒のカードが延々と続く。
世界は毒に溢れているのか!それとも、どれだけの人間を毒殺せよと言っているのか!
「ありがとう、ありがとう、もう毒はいいですから」
<猛毒だけに、もう、毒はいいんですね>とカナタ。
俺は、その言葉に、心底凍り付いた。カナタ!カナタが壊れた!
<そういえば、ジン様は、カードプレイヤーレベルが6になったことにより、カードプレイヤー中級者になりました。その効果により、場に5枚の土地カード、5枚のモンスターカードを置くことが可能になりました。よって、カードモンスター過剰置き問題については、上級庁への質問事項は、棄却されました。>
「え、そうなの?」
<はいそうです>
しかし、通常のモンスターを5枚おいて、ティア様とフェン様を召喚した場合、彼女らは召喚せずとも勝手に場に現れるが、どうするつもりなのだろうか?同じ状態がすぐに発生すると思うのだが。
<上級庁はその都度都度により、態様が異なるために、一概に回答することができませんとの回答がきております>
でた!回答に困った場合の答えその1だ。都度都度の様態を見ないとわからない。無責任発言であると共に、普遍的に適用されることを拒否する回答の形態である。
これで、上級庁の存在がますます妖しくなった。
<そんなことより、ジン様は現在LV28ですので、今まで5枚引きましたが、まだ73枚ドローすることが可能ですが、引きますか?>
でた、そんなことより!
既に、クレーマー扱いが始まっているのか!
<土地のカードが3枚ですので、足りないのですが・・・。因みに今までお知らせした攻撃力等の数字については、土地カードの影響を考慮しておりせんでした。心よりお詫び申し上げます>
俺も、カードがドローできる事をすっかり忘れていた。
すでに、戦力的に何ら問題はない。というか過剰戦力である。
謎の幼女と謎の少女は全く30階層の敵など近寄せることなどないからだ。
盾なしの鎧の盾はあらゆるものを粉砕し、白銀の剣は何でも切り裂くという。
既に、俺の無双ライフは潰えたのである。
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