第46話 勇士死すとも・・・
046 勇士死すとも・・・
俺とアステリオスの死闘は幕を閉じた。
熱い戦いだった。
そして、ついに片方が帰らぬ人になり果てる。
だが、その後は酷かった。
「よしよし、よくやったのじゃ、者ども早く、そ奴らの肉を確保せよ」
「え?」
「何をほおけておる。早くせんと、無くなるぞ。今日は、豚肉と牛肉を食えるのお」
「いやアステリオスが」
「何を言うておる、これはただの牛じゃ、気にするな。極上の牛肉じゃ、スキヤキをせねばいかんじゃろ」なんと、非業の戦士は、単なる牛肉扱いであった。
勇士アステリオスはそうして、手の者に解体されることになってしまった。
俺だけは、お前とのファイトを忘れないぞ、アステリオス!
アステリオスとは、彼の本当の名前である。
ミノス王の迷宮に閉じ込められた者の成れの果てである。
ミノス王の牛という意味で、ミノタウロスとよばれていたのである。
極上の牛肉、この世界では、魔獣の肉が高級品とされている。
魔獣の肉は、魔力を多く含んでいるという。この世界の人間には、それを極上に感じるということらしい。
つまり、地球人の俺たちが、感じる脂身の美味さが、此方ではいかに魔力を含んでいるかに変換されているのかもしれない。まさにA5クラスなのか。
なるほど、そうとなれば、ミノタウロスは牛肉かもしれない、しかもかなり強かったから、極上ということになるかもしれない。
こうして、ミノタウロスは葬り去られた、特別な肉牛ランクはA5というところか。
そして、勇士アステリオスは星になったのである。
因みに、アステリオスは星という意味らしい。
本来は、楽しみになるはずの宝箱はかなり棄て置かれた。
それなりの財貨がでた。
俺用の剣もでた。
金も出た。
しかし、例のエクストラ・ドローカードがなかった。
「カナタ、エクストラ・ドローカードがないぞ」
<はい>
「いや、ないんだよ」
<はい>
「ないのか?」
<はい>
なんと、ないらしい。
いつの間にか、それが当たり前になっていた。
まさに、エクストラだったのだ。
だが人間とはなんと欲深いことか!
当たり前だと考えるようになると、ないととても腹立たしくなるのである。
<カードプレイヤーレベルが上昇しました。カードプレイヤーレベルは6です。>
<プレイヤーは、『トラップカード』を得ることが可能になりました。>
何ともやり場のない怒りを、抱えていると。
カナタがそう言ってきたのである。
<トラップカードが欲しいですか?>
なんだか、すでにかなりゲームルールが破壊されてる感が酷い。
此方が、わがままを言ったばかりに、その対応をさせてでもいるかのような気持ちになる。
所謂、モンスタークレーマーである。俺はいつの間にかその範疇に踏み込んでいたのではないだろうか。
「貰えるんですか?」
<はい、エクストラ・ドローカードは出ませんが、トラップカードぐらいなら問題ないと思います>
カードゲームナビゲーターがクレーム処理をさせられている。
クレーマーは俺?
俺がクレーマー?
そう、アステリオスが星になったのと違い、この男はモンスタークレーマーになり果ててしまっていたのである。
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