第43話 ミスリル?
43 ミスリル?
緊急クエストの事を高給宿でリラックスされている、ティア様とフェン様に伝える。
「ミスリルの品?何故そのようなものを欲しがるのじゃろうな」とティア様。
「誰でも欲しいのでは?」と俺。
「そうかのう?儂はそのようなもの特に欲しいとは思わんがな」とティア様。
魔法金属ミスリルの優位性を否定なされる発言が連発される。
「他にこう、もっとあるじゃろうが。オリハルコンとかアダマンタイトとか」
「ええと、あるのですか」
「何を言うておるのじゃ、あの黒ガメが、アダマンタイト製じゃぞ」
「ええ?」
既に、国宝級を超えている。
しかも、名前は黒ガメ。
なんとも罰当たりで残念なネーミングだった。
「ヒヒイロカネというのもあるかの?」
「そうですね、ロマンがありますね」とフェン様。
ヒヒイロカネにはロマンがあるのだそうな。
「まあ、それはさておきそうであるならば、まずは30階層を突破する必要があろうな」
「え?」
「決まっておろうが、45階層にもぐるのじゃ、自力を付けねばらんじゃろうが」
こうして、30階層突破が決定される。
30階層のボスはミノタウルス。
近ごろ、筋力に自信がついてきたので、ガチでやり合いたいものだ。嘘です。
「頑張りましょう、ご主人さま」と美少女。
彼女は、フェンリル族(魔狼)の人化した存在だそうだ。
室内では、普通の衣装だが、迷宮内では、全身西洋甲冑姿になる。
「ところで、フェンよ、それはミスリル銀の鎧じゃろう」
「ええと、わかりません。母にこれを着ておくようにと渡されたものですから」
ここにくる人?は、どうしてこう親が過保護なのだろうか。
いやいや、彼らはカードの存在、決して生身ではないハズ。生物ですらないはず。
だから決して、可愛いとか美しいなどと考えてはいけない。
彼女らは、架空の存在なのだ。きっとカナタのような存在なのだから。
<失礼ながら、私には実体がございます>
頭の中で声がする。
しかし、実体を見たことはない。
感情もないような、無機質な声である。
「そうなのか、ではそういうことにしておこう」
俺は軽く、受け流す。
<も~>牛のような声が聞こえたが、やはり無機質だ。
メルキア大迷宮30階層。
ここを突破すれば、晴れて金級冒険者だ。
いつものように巨大な扉が閉まっている。
押せば開く。
そして、入れば扉は自動的に閉まる。
ガシャ~ンという大きな音を発てて。
「良いか、ボスとの戦闘はおぬしじゃ。我らは、周りの雑魚を片付ける」
「はい」「ギギ、ティアサマ」「ファー」
既に、チームリーダーの座から追われた俺、その目は遠い場所を見つめている。
何故だ!
それは、物理的に弱いからである。
この世界では強い者が勝つ。
弱い者が死ぬ。
至極単純明解な理屈に
単純ゆえに残酷でもあるのだ。
これほど、簡単なことはない。
生殺与奪は絶対強者が握っているのである。
逆に言うと、絶対強者になれば、誰の生殺与奪も握ることができるということだが。
男は自分で思うほど弱い存在ではない。
周りが、人外であるために勘違いしているに過ぎない。
自分もすでに人外の境地に到達しているということに今はまだ気づいていなかったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます