第32話 妖異

032 妖異


オークソルジャーの首に剣を叩き込む。

そのころヤミガラスがオークマジシャンの火魔法により、撃墜され砕け散る。


エンジェルの矢がオークソルジャーを牽制し、サージェントがそれに追撃をかける。

俺は、もう一匹のオークソルジャーとの戦いを始める。


盾と盾が火花を散らす。

剣と剣が火花を散らす。

だが、力は俺の方が優っているので、相手に隙ができる。

脇に隙ができたオークソルジャーに剣を深々と突きさす。

肉を突き刺す感覚がはっきりと右手に刻まれる。

まさに肉弾戦。

「グオ~」悲鳴を上げながらもオークソルジャーは盾で殴り付けてくる。

ガキンと兜が悲鳴をあげてひしゃげる。


それでも此方は、盾で、オークソルジャーを突き飛ばす。

オークソルジャーが転ぶ。そこへジャンピングエルボードロップを首に落とす。

グキっといういやな音が響き渡る。


俺は、すぐさまオークジェネラルを警戒して起き上がる。


だが、その時オークジェネラルはすでに、ティア様の黒ガメの攻撃で打ち砕かれていた。

恐るべき幼女戦鬼。

幼女というよりは、妖女である。

あまりにも、規格外。

オークマジシャンもついでに死んでいる。


俺は、苦戦するゴブリンサージェントに加勢する。

オークソルジャーのバックを一瞬でとり、『飯綱落とし』を仕掛ける。

鮮やかな弧を描く。後頭部を打ち付けられたオークソルジャーの首が不自然な角度に曲がると事切れる。


こうして、死闘は終わった。

一人あからさまに楽勝していた奴がいるが、しかもヤミガラスが戦死した死闘を制したのである。


「しかし、おぬしは何で体術ばかり使うのじゃ?」

「わかりません」


「まあ良いわ、早く宝箱を開けねばの」

今回は、オーク種なので、サージェントはその装備をクレクレということはなかった。

別に使っても問題はなかろうにと思うのだが。

「ギギ、チガウ」サージェントは首を振っている。

何かが違うのか、気に入らないのであろう。


「さてと開けるぞ」

ガチャリ、蓋が開く。


大天使(ミカエル)の衣。

大天使(ミカエル)の剣。


オークジェネラルの皮鎧。

オークジェネラルの軍靴。

オーク肉。


銀貨入り革袋8つ。

スペルカード。


将軍の剣。

ガーディアンの大盾。


これは、明らかに何かの間違いだ。

そんな違和感がとてもする。

大天使の???。

そんなものが20階層の宝箱から出るはずがない。

国宝級の代物に違いない。


大天使は、最強の天使、位階最上位の天使なのだ。

こんな階層ででるような代物では決してない。そもそも、天使いなかったし。


「何を疑おうておるのじゃ。すごい宝がでて、ここは皆で大喜びするところぞ」

確かに、一人「ファー」と大狂乱なのがいるが。踊っている。


妖しい、妖しすぎる。

何で、こんなにピンポイントに必要とされるものがでるのか、そんな馬鹿な話があってたまるか。


だが、すでに、エンジェルはそれらを身につけ始めている。

おい!お前にやるとは言ってないぞ。


「エンジェルLV18を権天使(プリンシパリティ)LV18にクラスアップしますか?」

アークエンジェルが抜けている!2段階クラスアップなのか!

まさに、神速の進撃。

兵は神速を貴ぶのである。


誰もおかしいと思わないのか?

そう、人間は俺だけだった。そう、彼らはモンスター、思考形態は人間とは違うのだ。

たとえ、20階層のボスの宝箱から、大天使のアイテムが出ても決して、ひるむことなどない。


罠を疑っているのは、俺一人だった。


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