第31話 20階層のボスの実力
031 20階層のボスの実力
朝、俺は目覚めた。酷くだるい、悪夢にうなされた。
もちろん、迷宮の中では、朝陽が昇るようなことはない。
時間的に、朝であるということだ。
「苦しそうに寝ておったの」そこには、カード召喚していないティア様がいた。
「ティア様」
「どうしたのじゃ、その捨てられた犬のような表情は」
俺は、幼女に縋り付いていた。
「よ~しよ~し、怖い夢でも見たのかの」
ティア様が俺を優しく撫でてくれる。
「何と、そのようなことがの~」ティアは起こった事実を聞いてからそういった。
「だがの、儂の婿になるおの子がそのようなことでどうするのじゃ、さて、朝餉をとったら、いざ20階層を目指すぞ」
この世界では、人の命など、埃よりも軽い。
斯くいうジンも常に、人の死を見て経験してきた。
だが、任の方は、あまりにもそのようなことに不慣れだった。
現代日本は人の死から遠い世界である。
まあ、殺人事件も交通事故もあるが。
しかし、目の前で簡単に人が殺されるようなことはない。
ジンの世界はそうではない、常に死となり合わせ、一瞬の油断、判断の間違いが死を招く。
そこら辺の擦り合わせ、折り合いがついていないのだ。
だが、そこからは、休みなしのノンストップ・サーチアンドデストロイの始まりだった。
その日の夕暮れには、20階層の扉前にきていた。
「うむ、汝らよく頑張ったの!」
俺、サージェントとエンジェルはクタクタだった。
上級冒険者の冒険というのもこんな感じなのだろうか?
黒ガメのシールドバッシュは既に、音速を超えているらしく、バンという強烈な音と衝撃波が発生しているではないか。
モンスターがまさに飛び散るような破壊力であった。
俺は、LV19ゴブリンソルジャー、L19オーク、L19ダンジョンウルフなどのカードを手に入れることができた。
俺はLV23にサージェントとエンジェルはLV18へと上がっていた。
「さてと、此方にも色々都合があるのじゃ、行くぞ」ティア様は無慈悲にそう告げた。
LV18オークジェネラルとLV15オークソルジャー3体、LV15オークマジシャンが待ち受ける。扉の先へと。
ティア様を先頭に我々供のものが続く。
扉が、ギギギと軋みながら閉まると、ガシャ~ンと音がする。
これで、逃げることはできない。
強制脱出のアイテムも使えない。
最も、そのような高価な品は持っていないが。
ボボボと周囲を照らす青い炎がついていく。
奥の方から、オークジェネラルとその親衛隊が登場する。
「いざ、参ろうぞ」
「ヤミガラス、闇魔法」
御供のヤミガラスが闇魔法で相手の視野を奪いに行く。
エンジェルは、すかさず牽制の矢を放つ。
「ギギギ」扉の軋み音と同じ表記だが、これはサージェントの声だ。
オークマジシャンが、ヤミガラスに火球を放つ。
そして、親衛隊のオークソルジャーの3匹が突進してくる。
ガキン、剣と剣がぶつかり合い、盾と盾がぶつかり合う。
オーク自体が大きな豚頭の巨人に近いため、俺とサージェントは上からの攻撃を迎え撃つ形になる。
俺は、剣をすぐさま回転させて、裏拳の如く、オークソルジャーに切り付ける。
オークソルジャーはそれを盾でさばくが、下を向いた俺の剣が、オークソルジャーの足首を切り付ける。
勢い余って、ガキンと石造りの床が火花を散らす。
その前に、オークソルジャーの足首が両断されていた。
すでに、俺も一人前の戦士としての力量だけは持っていたのだろう。
「ギエ~!」オークの魂切る悲鳴が上がる。
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