第29話 昏い嗤い

029 昏い嗤い


とても、気分が悪いが、それを転換するために新しいスキルを試そうと考えた。


カードプレイヤーレベル3を取得したことにより、自分の装備アイテムなどをカード化することが可能になりました。である。


俺は、10階層で得た、火蜥蜴の皮鎧をきていなかった。

ものはとてもいいのだが、色が赤くとても目立つ。

だから、今までの安物の皮鎧をきていた。しかし、今こいつらのせいでそれは切り刻まれた。


代わりに、こいつら鎧をはぎとってやることにする。

三人は気を失っているので、サージェントとエンジェルにはがしてもらう。

武装も解除だ。


色々なものがある。

キャンプ用品、薬品類、携帯食料などである。

「カナタ、どうすればいい」

<はい、念じればカード化します、但し、種類の区別はできますので、全部で一式のようなカード化はできません>


ふうん、さすがに、穴はふさがれているようだ。

ちゃんと、此方の自分勝手な解釈に対応するカナタは凄いと思う。


「よし、鎧たちよ、カードと化せ」

<言語化は必要ありません>


「入れ」

そもそも、(から)のカードは概念上の存在なので見たことがない。

だが、鎧一式のカードが出てくる。

「これは」

<アイテム化したカードは実態化します>


これはいよいよカードボックスが必要になるな。

男たちの装備やその他色々をまとめてカードにしていく。


セーフティーゾーン内。

「おい、起きろ」

俺は、未だ意識を失っている男たちを起こす。

「うう」

「あっ、なんだ」

「ここはセーフティーゾーン内だ、寛大な俺は、此処をお前たちに譲ってやる」

「え?」


「いいか、お前達、地上にでたら、もうこのメルキアからは出て行って貰う、今度街であったら、確実に迷宮で死んでもらう。わかったな」


「あっ。」

「なんだ?」


「ラルクはどうなった」

「ラルク?なんだそれは、知らんな」


ラルクの死体はない。

迷宮内で死ぬと、なぜか迷宮へと没して消えてしまうのだ。

ラルクの場合は、俺のカードに入ってしまったわけだが・・・。


「くそ、ラルク」

「いいか、今は自分の事を心配することだ」

「何!」


「自分たちの置かれた状況をよく考えてみろ」


「なんだこれは」

男たちは、ほぼ下着姿である。


「いいか、生きて出られたら、メルキアから去れ、今度見つけたら、確実に始末する。其れだけだ」


「待ってくれ、こんな恰好じゃ、上までいけねえ、助けてくれ」

「お前ら、俺が助けてくれといって、助けてくれたのか?」

俺の顔がゆがむ。

「もちろんだ、助けたよ」


「ふん、まあいい、じゃあ餞別にこれをやるよ」ナイフを三本ほおる。

これは、素材はぎに使われるものだ。


「頑張って、上までたどり着いてくれ、じゃあな」


「くそ、覚えてろよ」誰かが小さな声で言った。


俺はほの昏い嗤いを浮かべた。

皮はぎ用のナイフ、しかし、これにはいろいろとある。あまり切れすぎると、皮が切れてしまうことが有る。

そのため、それ用のナイフはあまり切れないのだ。

勿論戦闘には不向きなのだ。


確かに殺しはしない、しかし、奴らは罪を犯している。

その罪の深さは、迷宮が裁いてくれるだろう。

このような下種に付き合うことこそ、もっとも忌むべきことではないか。

自分も下種に落ちるのか?


否であると。

今の俺はそういえる。それだけ強くなったということであろう。


しかし、その顔には、薄ら笑いが張り付いていた。


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