第27話 正当防衛
027 正当防衛
残り三人の冒険者が思い思いの武器を手にしている。
そんなもので人を殴れば、大けがをさせることは必定。
通常のLV16程度の冒険者は攻撃力が40。
そしてLV22の俺の防御力は、159、先ほどの攻撃では、40の攻撃力に対して防御力159が完全に打ち勝ったためである。
そして、彼らが武器を持った場合は、その武器の攻撃力が追加される。
おそらく、鉄製の武器の攻撃力はいっても50前後、足せば90である。
俺の防御力159には、届かない。つまり無傷となる。
そして俺の攻撃力は、216。
相手の防御力は、30程度。HPは60前後である。
つまり此方が、本気の攻撃を繰り出せば、簡単に即死させることができる。
これが、この世界の物理法則。
これは、素手の場合の数字である。
そこまで計算して、俺は自分のヤバさに気づいた。
本気で殴れば、彼らは死ぬ。しかも簡単に。(おそらく砕け散ることになるでしょう!)
ジンは今までの無礼を償わせろと言い、任は、そんなことは到底認められないという。
ジンの心は傷ついている、そして、任の心は、平和な世界の者(平和ボケ)である。
「この剣の切れ味を確かめさせてもらうぞ」その中の一人がそういった。
「迷宮じゃ、証拠はのこらねえんだよ」言ってはいけないことを言ってしまった。
こいつらは、明らかに以前にも何かしたに違いない。
「そうか、じゃあ、俺が何かしても、証拠は残らないということだな」
冷酷な視線が男たちを氷付かせ、その声には凄みが含まれていた。
その時はじめて、彼らは踏んではいけないものを踏んだことに気づいた。
「囲め!」
4人が俺を取りかこむ。
囲みの中には、右手を砕かれた男も左手に武器をもって入っている。
さすがに冒険者、しかも日頃から連携の訓練をしている男たち、個々の力では圧倒できても、好妙に連携し、攻撃を仕掛け、此方の攻撃の的を絞らせないように、動き回る。
そして俺は、物理だけでなく、それ以外の要素の修練も大事であるということを悟らされた。
此方の防具に傷が増えていく。
やはり、修練とスキルは向こうの方が上だった。
4対1なのだから。
「野郎」真後ろの一人が剣で切りかかる。
チン、剣で跳ね返す。しかしそれは、誘い。すぐ横の男が手にしたものを投げる。
「グ」それは、砂。目つぶし。
「もらった」今度は真後ろの男がひるんだ俺の背中に、一撃を喰らわさんと振りかぶる。
グサッ。
剣は、俺の安物の革鎧を切り裂いた。
しかし、あろうことか、そこで止まる。防御力の数値は攻撃力の総数を上回ったのだ。
だが俺は、それどころではなかった。眼が見えない体。刺されて少し痛い程度よりも、眼が見えない事で半狂乱状態に陥っていた。
「くそ!くそ!」今までは冷静に、修練のつもりで攻撃させていたが、こんなことになるなんて!
「ちくしょう!」
油断が死の危機に直結する。それが迷宮の透徹した道理である。
目の前が涙でにじむ、そして焦り。
血圧が急上昇して、考えが千々に乱れる。
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