第26話 冒険者

026 冒険者


俺たちの戦いはさらに続く。

あれから、ティア様は帰ってこない。

因みに召喚したが無視された。


現在16階層。

LV16ヤミガラスが次々と『暗闇』を仕掛けてくる。

かかると、視界を暗闇にされる厄介な魔法。

視界が失われているその間に、防具のないところを攻撃されるのだ。


攻撃力のある魔物がいるとアッと言う間に、死の危機にさらされる。


「エンジェル、弾幕が薄いぞ!」

「ファー」

エンジェルは頑張って、矢を放つ。


俺は、ナイフを投げる。

ゴブリンサージェントは石を投げる。

ヤミガラスは飛行タイプだ。


何とか戦闘を終え、進む。


そこには、セーフティーゾーンが存在した。

だが、先に客がいる。

俺は、エンジェルとサージェントを手札に戻す。

今日は、此処で休みたい所だ。


セーフティーゾーンは、迷宮の中で、モンスターの出ない場所である。

キャンプするなら当然そこになる。

だが、それは他の冒険者も同じであった。

それと、冒険者は、迷宮内では、仲間以外は仲間ではない。

迷宮内では、ほぼ犯罪の証拠は残らない。

だから・・・・・。

そして、さらにいうと仲間同士でも・・・。

証拠が残らなかったりする。


「俺たちが先にきた。貴様は・・・?」

「ゴブリンスレイヤーじゃねえか!」

某アニメでは、主人公だが、ここでは、ゴブリンしか倒せない無能者という意味で使われている。


「どうやって、来た?一人なのに」

4名のパーティーが俺を睨みにつける。


「なんか、裏技があるのか」

この物理の世界で裏技があるとでも思うのか?

俺は、セーフティーゾーンを抜けようとした。

すると「おい、待てよ!」

「近ごろ、銅級に昇格したからって、生意気すんじゃねえ。挨拶ぐらいしていけよ、万年鉄級!」


セーフティーゾーンを踏み出してくる、冒険者。

「どうも、私は、別のゾーンにいきますので、すいませんでした」と頭を下げる。

「この野郎」挨拶もし、謝罪もしたが、彼は殴り掛かってくる。

依然の俺なら、よける事もかなわない。思い切り殴りつけられる未来しかない。

しかし、今の俺はよけることが十分可能だった。


だが、その拳を敢えて受ける。

ガシ、グキといういやな音が響きわたる。

すでに、通常冒険者の4倍の能力を有する俺に、彼の拳では硬すぎたのである。

「ぐお!」

「どうした、シルバ」

「う、拳が」

捻挫、悪くすれば骨折したのだろう。

「てめえ、」

「俺は何もしていません、俺は殴られただけです」

もちろん、見えていた。皆にも。


「おい、どう落とし前付ける気だ」

武装をもった三人が、出てきた。


「落とし前も何も、私は殴られただけです」

「へん、お前みたいな無能にコケにされて黙ってられるか」

確かに、そういうところもある、面子が大事なところもある。舐められたら終り的な部分も冒険者家業にはあるのだ。


「そうですか、そこまで言うのなら、私も正当防衛として対処させていただきますよ」

相手のレベルはおそらく、LV20にも届かない筈である。

此処は、16階層、ほとんどが、そのレベルに近い数の階層を潜るからだ。


「何だとコラあ~」冒険者の一人が激昂した。

「鉄球のくせに、生意気にもほどがあるぞ」もう一人が絶叫した。

とにかく、弱いものは殴っても蹴っても踏みつけてもいいのだ。

そうここはそういう世界だからだ。





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