第25話 不条理に包まれて
025 不条理に包まれて
世界は不条理に包まれている。
そして、俺の周囲には秘密が溢れているのだ。
次の日、10階層から探索を開始する。
一度、10階層をクリアすれば、そこからダイレクトに探索を開始できるような装置が設置されている。
迷宮を作った人間?は迷宮を制覇してほしいのか、してほしくないのかはっきりとしてほしい。
探索を手助けする装置が存在したり、かと思うと、いやらしい罠を仕掛けてみたりと何をしたいのかわからない。まったくもって不条理である。
すでに呼ばれもせぬ間に、ティア様が出現する。
そういうシステムではないだろう!
俺が、『黒龍召喚』とカッコよく声をかけるのが、デフォだろうが。
「早く、奴らを呼ばんかの」
いや、あんたまだ呼んでないだろう。
「早くするのじゃ、敵は待ってくれんぞ」
この場合は、サーチアンドデストロイを推奨した言葉として捕らえるべきなのか?
ゴブリンサージェント、エンジェルが召喚される。
「目指すは、20階層じゃ、往くぞ者ども」
「ギギショウチ」
「ファー」
すでに、誰が召喚主か不明のまま、まさにサーチアンドデストロイの戦いとも言えない、作業が始まる。
全てを通称:黒亀のシールドバッシュで粉砕するティア様。
「ふん」飛び散るゴブリン、まさに阿鼻叫喚のファンタジー世界だ。
15階層を超える頃になると、オーク達が現れ始める。
「こいつらは美味いぞ、ただし、迷宮産で肉が取れるのか不明じゃがな」
「ふん」ジャンピングシールドバッシュだ。
身長差が大きすぎて、ジャンプしないと顔面を強打できない。
「ティア様少し休まれては?」
「おお、そうじゃの。おぬしなかなか気がきくのお」
全く戦っていないが、ついていくのも大変なのだ。
俺たちは、ドロップ品の収集係だった。
「少し、盾なしがよごれてしまったの、ちとシャワーを浴びてくる。お前たち油断するなよ」こういって、最大の戦闘力の幼体はまたしても迷宮の空間へと掻き消える。
「ヤバいぞ、皆、戦闘配置だ」
「ギギ、ヤバ」
「ファー」
エンジェルの奇声もこころなしか元気がない。
15階層で初めての戦闘が始まろうとしていた。
LV15オーク、LV15ゴブリンソードマン、LV15ゴブリンソルジャー、LV12ヤミガラス。
対するは、俺様LV21、ゴブリンサージェントLV15、エンジェルLV15。
「エンジェル、ヤミガラスを撃て」
「ファー」エンジェルの矢がヤミガラスを打ち抜く。
ヤミガラスの魔法「暗闇」は受けると、視界を喪失するいやらしい魔法だ。
俺は、ゴブリンソードマンの腕を斬り飛ばした時、サージェントはソルジャーを殴り飛ばしていた。
オークがこん棒を力任せに振るうが、当たらない。
「見える!」
オークの動きが読める。
オークのこん棒が風切り音をさせながら、かすめていくが、それは読み通りの場所。
オークの脇腹に、短刀を深々と突き刺す。
「グオ~」絶叫を上げるオークの喉に、エンジェルの矢が突き刺さり、反対側の脇腹に、サージェントの短剣が突き刺さる。
かがむオーク。
オークの後頭部に高速の肘うちが落ちる。
「グフ」オークが倒れる。
「何とか、やれたな」少し心配だったが、ティア様なしでも俺たちだけでもできる。
誰にいっているのかも不明だが俺は、口走っていた。不安が嵩じると独り言が多くなってしまうものだ。
「うむ、少し心配じゃったが、これなら、死ぬこともあるまいて、では、本当に風呂にいってくるかの、できれば前進しておくのじゃぞ」
こともなげに言い、ティア様は今度こそ迷宮の闇へと消えた。
少しは、心配してくれていたようだ。
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