第23話 エンジェルの不満
023 エンジェルの不満
エンジェルが不満を漏らすのも無理はない。
同期?のゴブリンがソルジャー、サージェントと2段階のジャンプアップを果たしたのである。
自分は、サークレット一つ貰っただけである。
彼女?もクラスアップしたいのだ、ろう。
だが、そもそも、俺はエンジェルがどうやったらクラスアップするのかさえ知らない。
ゴブリンがクラスアップしたのは、全くの偶然なのである。
「ファー、ファー」何か体を触っている。
どうやら、衣が必要らしい。
「ファーファー」今度は何か武器のようなものを、ジャスチャーしている。
「ふむ、エンジェルは新しい衣と、大天使の杖が必要だと考えておるようじゃの」
「しかし、そんなものは何処にあるのか」
「メルキアの20階層はオーク、30階層はミノタウルスがボスの筈」
「ふむ、何とも面倒なことじゃて」
「まあ、さすがに今は無理じゃな、儂も父上に相談してみてやろうがの」
「本当ですか」というか、カード召喚のモンスターに両親がいるのか?
「似たようなものがあれば、そ奴も納得するのではないかの」
なんだか、俺の冒険はおかしな方向に向かいつつある気がしてならない。
俺が無双して、ざまあするはずなのだが、すでにリーダーすら勝手に外されている。
此処は、新能力で無双を開始するところなのでは?
しかし、現実とはままならないものなのである。
1階層まで戻り、カードに戻す。
俺は、今日の稼ぎを得るために、ギルドへと向かう。
魔石やドロップ品を換金する。
「近ごろ、本当に調子がよさそうですね」
受付嬢のサラは、いつもの笑顔で出迎えてくれる。
あまりにもいい笑顔なので、勘違いしそうだ。俺は、この世界での29年と普通のサラリーマン生活35年の通算64年イコール彼女いない歴の男だ。免疫はないので、その笑顔がヤバい。心に沁みる。
「ああ、やっと何か、コツをつかめたみたいだ」何とか返す。
「本当に良かった、後は、パーティーに入れてもらえればいいんですが」
心配そうな顔もヤバい。
「そういえば、アンジェラさん今そこにいます」
「ああ、そうか。じゃあ、お礼を言いにいってくるよ」
「そうですね」
テーブルには、アンジェラとその仲間達がいる。
「アンジェラさん、どうもありがとうございました。おかげで命拾いをしました」
「何言ってるの、ジン。あなたには、借りがあるのに、お金も返して貰わなくてもよかったのに」アンジェラは、冒険者の中でもかなりの綺麗どころである。
「万年鉄級のジンさん」彼女のパーティーの一人がチャチャを入れる。
「レイス、おだまりなさい」
「ああ、アンジェラさん気にしていませんから」
「でも、銅級に昇級したんでしょう?」
「ええ!」あちこちから驚きの声が上がる。
2階層で死にかけた男が10階層を突破するなど、驚天動地の事態なのだ。
それだけこの世界の法則は揺るぎのないものなのである。
今は、15階層まで進んでいるがな。
「ねえ、ジン。」
「何か」
「私とパーティー組まない」潤んだ瞳のアンジェラはとても美しかった。
「えええええ」
だが辺りは、恐慌に包まれた。
「すすすいません、失礼します」
俺は、慌ててその場から逃げ出してた。
あまりにもその笑顔が眩しすぎて、美しすぎて。
なんと答えたらいいかわからなかったから。
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