第21話 『盾なしの鎧』

021 『盾なしの鎧』


ようやく、意識を取り戻した俺は、再度10階層のボス部屋攻略を志す。

前衛はLV20俺、LV12ゴブリンソルジャー、LV10黒龍?の幼女。

後衛はL11エンジェル。


「ところで、黒龍のスキル等について教えてほしいのだが」

「おぬし、レディーのプライベートは立ち入り禁止じゃ、そんな事もわきまええぬのか」鷹揚に答えるレディ。

「そ、そうなのか?」

「そうなのじゃ」

「では、戦闘は大丈夫か?」

「おぬし、私のような幼女に戦闘をさせるのかえ?」

「やはり、無理なんだな」

「何を言うておる、儂は黒龍ぞ、何で戦闘ができぬと思うておるのじゃ」

ふへ!


かなり遊ばれてしまった。

しかし、ワンピース姿の幼女は戦闘に耐えられるのか。


「よし、ではもう一度ボス部屋の攻略に入るぞ」

扉の前で最後の確認を行う。

その時、ゴブリンソルジャーが、赤い目を光らせながら。

「ギギ、ギギ」と何か頭を指さしている。

しかも、話し相手は、黒龍の幼女である。

「ふむふむ、なるほど」

「おぬし、この小鬼が言うには、どうしても兜が欲しいのじゃそうな」

「え」

「よいか、まずは、ゴブリンジェネラルの兜を打ち砕くのじゃ、さすれば、部位破壊報酬に兜がのるじゃろう」なんと、お告げである。

「そうなのか?」

「何じゃ、おぬしは冒険者じゃろう、その程度のことは弁えてしかるべきじゃろうが」

「すいません」

「なに、人間には、分からぬ事も多かろうて、儂に任せておけば良い」

すでに、リーダーの地位が失陥したことを思い知る男。

しかし、俺はソロの冒険者だったはずなのだが。


「では、参ろうかのう」

幼女は悠然と扉を押し開ける。

「ギギ」

「ファー」

その他のモンスターも幼女に従うつもりのようだ。

仕方なく、俺も後を追うことにした。


ギギギ、ド~ンと扉が閉まる。わざと音をだして圧迫しているだろう!


ボボボ青い炎が室内を照らしていく。。

「雑魚はいね」幼女はすでに、三体のゴブリンソルジャーの腹を抜き手で突き刺していた。

「これが、兜か」

ジャンピング回し蹴りがジェネラルの兜を砕き、同時に頭もつぶして、戦いは終了した。

「さてと、後は宝箱じゃな」


たったこの一瞬で、俺はLV21に、ゴブリンソルジャーはLV13、エンジェルはLV12へとレベルアップした。


「よし、これじゃな、では開けるぞ」

幼女は容易く宝箱を開けた。

そこには、なんと鎧が入っていた。

俺は宝箱2回目になるので、大した価値のあるものは出ない筈だった。(初回報酬が外れるため、ごく普通の内容に戻るのである)

「おお、ようやく我が鎧が届いたか」

「え?」

「父上に頼んでおいたのじゃよ、戦場にワンピースではしまらんではないか」

「そうなのだが・・・」

「これは、おぬしの母国の鎧の完全レプリカ。『盾なしの鎧』じゃ。おぬしの国をリスペクトして作らせたものじゃ。飛び道具の無効化の魔法がかけられているが、そこは許せよ、ほれ貴様の兜があったぞ」ポイとゴブリンへと兜を投げる幼女。


「何で、10階層の宝箱にそんなものが入っているんだ」

「そうじゃの、細かいことは考えるな、〇げるぞ。儂は〇げたお主の嫁になりとうはないのじゃ」と少し嫌そうな声である。


「え?」


<え?>頭の中に無機質なカナタの声がした。


「え?」


謎は深まるばかりだ。

すでに、世界の法則のない世界へと来てしまったに違いない。

ここは、そうすでに火星辺りまで来たようだ。地球ははるか彼方に行ってしまったのだ。

いや、火星が地球に突っこんできているのかもしれない。

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