第19話 銅級冒険者へのクラスアップ

019 銅級冒険者へのクラスアップ


俺は、ギルドにいた。

「これを」ギルドカードを受付嬢のサラに手渡す。

「どうしたんですか、ジンさん」

「何とか、10階を攻略したので、クラスアップしたいんです」

鉄級から銅級への昇級条件は10階層の攻略である。


俺たち冒険者が持つ冒険者カードは、様々な能力を持っている。

例えば、何階層まで攻略したかのデータである。

つまり、冒険者カードを渡せば、冒険者が何階層まで潜っているのか、わかるということだ。

ただのカードなのに、やたらハイテクなのだ。

しかし、世界の文明レベルは中世ヨーロッパ風とおよそ脈絡がない。

古代文明のロストテクノロジーで動いているとか動いていないとか。

そんな馬鹿なことがあるか!メンテナンスがいるだろう。

燃料の供給はどうなっている。

そもそも、その古代文明が滅びたのはいつなんだ。

沸々と疑問が湧き上がる。しかし、そんなことをいっても仕方がない。

ここは、そういう世界なのだ。


「一人で攻略したんですか?ダメじゃないですか」

サラは心配してそう言ってくれている。

「大丈夫だ、問題ない」

「でも」


彼女はそういいながらも嬉しそうに、機械にカードをとおす。

そして、銅級冒険者へとクラスアップが終了する。


「そういえば、なんだかジンさん少し、かっこよくなりましたね」

何を言っているのか、強くなるではなく、カッコいいとはどういう事だろうか。

ちょっと嬉しいが。


「でも、無理はダメです。もう、レベルも20で銅級なんですから、どこかのパーティーに入れてもらうとかした方がいいですよ」サラは笑顔で言ってくれる。

しかし俺は、その誰かと組むのがいやだ。この街にいる冒険者はほぼほぼ、皆俺を馬鹿にしてきた。今更そんな奴らと組むなどとは言うことは、決してないと言い切れるだろう。


人間不信は行きつくところまでいっている。

組めるとすれば、アンジェラくらいだろう。

他の人間と組むなど考えられない。というか、迷宮での事故に繋がりかねん。

モンスターよりも人間の方が怖いのだから。


それに、俺には、すでにパーティーメンバーがいる。

頼れる仲間、少し眼が赤く光っているが、いい奴らだ。見た目は怖いけど。


俺は、アンジェラへの借金を銀貨で支払い、その分をサラに預けた。


「おう、万年鉄級のジン先輩じゃないですか」そこに来なくてもいい人間がやってくる。

銀級冒険者のライガーである。銀髪のこの男は、これ見よがしな筋肉を見せながら近づいてくる。

こんなやつでも、昔、冒険者の手ほどきをしたのは俺だ。

LV30越えで銀級である。

この迷宮都市でも、銀級はそれほどいない。

なかなかのものということである。


「どうしたんですか、ジン先輩、困ったことがあったら何でも言ってくださいよ」

何か言ったところで、助けてくれる筈がない。そもそも、この街の冒険者は俺を助けたりはしない。

「いや、特にない」

無作法に、ライガーの腕が俺を掴みに来る。

これまでの俺だと、逃げる事もできず捕まるのだが、今回は違った。

手首を掴み、ひねりを加える。

ライガーはアッ!という声を出して、床に倒れこむ。


グキといういやな音がする。

「すまん、ライガー。つい俺の攻撃では、苦も無くよけるものと思っていた。わざとやられてくれたのか、自信がついたよ。ありがとう」謙遜してそういっておく。

手首の関節を脱臼し悶絶しているライガーを無視して、俺はギルドを後にした。


やはり、俺のにはLV40程度の力があるのだ。

この世界では、レベル差は絶対、いやパラメータ値は絶対なのだから。


この世界の法則パラメータの恐ろしさを教えてやるよ。

昏い炎が噴き出してくる。今までにあった虐めは想像を絶するものがある。

きっと、この仕返しも想像を絶するものになるに違いない。



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