第11話 Y or Y?

011 Y or Y?


9階層から10階層で、レベルの高いゴブリンカードを集める。

しかし、これだけで勝てるのか?そういわれると甚だ心もとない。


普通はパーティーを組んで突破するのだが、俺は虐げられてきたので人間に対して不信感を持っている。できれば組みたくないし、悪名の所為せいで組んでくれる奴はいないだろう。

さらに言えば、この能力は他人に知られてはいけない。今まで聞いてきたスキルとは明らかに異質だ。さらに、俺は転生者。決して他人に知らせることはできない。


ボス部屋のゲート前をいったり来たりしつつ日々が過ぎていく。


そんな時だった。

<プレイヤーのレベルが20になりました。プレイヤーのレベルが20になったことにより、Rレアのカードが解放されます。現在、プレーヤーのレベルは20です。山札から20枚ドロー可能です。>

<また『女神の祝福』の効果により、山札から50枚ドロー可能です。>

<ドローしますか?Y or N>


何だと!

この状況でレアカードの解放だと!

神は我を見捨てたか!

そうじゃねえ~。

「狼よ!」

字が違うだろ!

「おお神よ、我を助けたまえ!」

俺は叫んでしまった。

さすがに一人でボケていると少し寂しさがしみだしてきた。


だが、これはレアカードを引き抜いて、この状況を突破せよとの神の啓示である。

俺は確信した。確信したのである。


「今度こそ、俺のターン!」


勇躍、Yを選択しようと思ったのだが、<ちょっ!待てよ!>なぜか、あの人の物まね風の声が俺の動きを止めた。

先ほどまでの、システム的な声とは違う声が聞こえる。

「え?」

<ちょっ!待てよ!>なんだかこの場面に物まねいらねえし。

「へ?」

<へ?じゃねえよ>

わからん。

誰だ、俺の神聖なるドロー、俺のターンを邪魔する奴は。


少しきざな感じの声が脳内に響く。

<お前もレアほしいだろう?>

<Y or N?>

声の言い方が癪に触るので、Nを選択。

ピコリ!文字が変更される。


<Y or Y?>

に選択肢が変更される。

イエスしかない!


<力を貸してやるよ。>声が聞こえる。

イラン!


<このままドローすると精神汚染値が5%上昇します。>システム音声(カナタ)が言う。


<だが今のままじゃあ、突破不可能だぜ、お前にもわかってるだろ。たった5%じゃねえか、何の問題もねえよ。びびるなって。>


<それともパーティーに入るのか?入れてくれる奴らはいるのか?>男の声は的確な攻撃でクリティカルヒットする。心に貫通して痛い。


「わかった、じゃあ力を貸してくれ」俺も男だ、5%にビビる訳には行かない。

<OK、OK、いい心がけだ>


<だがよ、よく考えてほしいんだわ。そもそも、Rなんかあんまり役に立たないのはわかってるだろ>きざな声が続ける。


なんだと!誘惑がヒートアップしている。


<俺の力でSRだしてやるよ。へへへ、まかされて。>今度は誰の物まねだよ。


<このままドローすると、精神汚染度がさらに10%上昇します。>カナタの声に感情はない。

<回避することを推奨します。>

カナタの声が正しいのはわかる。


だが、もしSRがあれば!

局面が一気に打開できるはずだ。


一気にだ!

先ほどまでは、慎重慎重を信条に、安全マージンを優先してきた俺は、そこにはいなくなりつつあった。


<いままで、お前を馬鹿にしてきたやつらを見返すんだよ!こんな特別のチャンスは滅多にあるもんじゃねえぜ>


そうとも、奴らに一泡吹かせてやるんだ!


これはチャンスなのだ、世界を震撼させるためのな!

もうすぐ始まるんだ、俺の無敵艦隊の行進が、軍艦マーチが流れ始める。

え?古い、そんなことはないだろう。




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