第4話 TCG(トレーディング・カード・ゲーム)

004 TCG(トレーディング・カード・ゲーム)


俺は夢を見ていた。


俺の名前は天堂 任(てんどう じん)。

しがないサラリーマン。昼は普通のサラリーマン。だが夜は、やはりただのサラリーマンだ。

そうそれほどの特徴はない。

そんな俺だが、趣味はちょっと凄いかもしれない。

TCG(トレーディング・カード・ゲーム)の世界では知る人ぞ知るという、ちょっと有名人なのだ。勿論知らない人は全く知らないだろうが。


日本でもいろいろなTCGは存在するが、メインになるものはやはり、『マッジック・ザ・ドラゴン』。これはアメリカのゲームだ。

そして日本発のTCGは、『勇気の王 ブレイブキング』だ。

俺はこのどちらでもかなり上位の存在なのだ。


秋葉原などに出向けば、サインを求められる事も、極稀ごくまれにある。


そして、俺はこの日、秋葉原のマジック・ザ・ドラゴンの大会に出ていた。

準決勝まで勝ち進み、後は決勝戦の相手をまつばかりだ。

少し大きめの会場には、世界の王たる、ウィザード・コースを見ようとかなりの人間が集っている。

マジック・ザ・ドラゴンは世界的なゲームだ。

長いので以下マジックという。

マジックには多くのファンとプレイヤーとコレクターが存在する。

そして、そのマジックで最も、強い男(世界中で)こそ、この『ウィザード』なのである。

彼の出る大会は、優勝を諦めるしかないと言われるほどに。


ウィザードはまさにマジックの女神に愛されているといっても過言ではない男なのだ。

彼がブースターパックを買えば、何ともレアなカードに恵まれるというのだ。

嘘か本当かは知らないが。


彼のデッキには、まさにお宝のカードが満載されているのだ。

観客はそのレアカードとその所有者のウィザードをひと目見ようと集ってくるというわけだ。


彼の対戦相手は、小波 勇気(こなみ ゆうき)TCG『勇気の王ブレイブキング』(以下勇気王という。)の日本チャンピオンだ。ウィザードがマジックの世界チャンピオンなら、小波は勇気王の日本チャンピオンということになる。


因みに、ウィザードは勇気王はしないそうだ。アメリカでも売られているけどな。

かくいう俺は、いつもこの小波に勇気王で負けてしまう。

とても残念なキャラ、小波の引き立て役、万年2位の任として有名な側面があることは否定できない。そういう意味で俺はミスターセカンドのジンとして知る人ぞ知る人間なのである。


ウィザードは自分の山札から一枚をドローする。

それは、山にあるうちから、とても高価なカードであることがわかった。

マジックの初期の頃のカードは、現在のカードと角の形が少し違う。


明らかに初期の頃の形のカードだった。

ただのカードだが、その取引価格は数百万円、状態にもよるが、数千万円も行くカードが存在する。

そして、それが商売として取引が行われているのだ。


ウィザードのドローしたカードはその、数百万円もするカードの一つだった。


そのカード『ブルーローズ』は破格の性能を持ち、それゆえに再録されることはないカードだ。

再録されないということは、今あるものしか存在しないというバランスブレイクな逸品ということを宣言していることである。再録されない理由は、人気がないからでなく、強すぎるからなのだ。


しかも、それを使うとは!きっと別の保存状態の良い同じカードが無ければ、恐れ多くて使えない。それだけ、カードに惜しまず金をつぎ込めることが可能なのだ。

ウィザードはそれを初期に購入していたといわれるが、それは眉唾だろう。かなり時間的にさかのぼる(それだけ歴史がある)必要がある。

年齢的に合わないだろう。


会場にどよめきが興る。その超高価なカードをデッキに入れていることが信じられなくて起こるどよめきなのである。


これが、『ウィザード』というカードに愛された男の正体なのだ。


そして、観客はそのカードを見るために、神の愛の一部でも自分に来るようにとやってくるのである。きっと彼等はそのカードを得れば迷わず売るだろう。

そして、神はそのような者に愛を与えることはないだろう。


今、俺は確信をもってそういえる。



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