第3話 死闘
003 死闘
最悪だ!しかし、自分の無謀が招いた結果である。
チームであればなんの問題にもならない、普通の冒険者ならば、それほどの危機というほどではない。
だが、ジンにとってはまさに、致命的な危機である。
レベル5のゴブリンとレベル2のゴブリンが2匹も!
どういう訳か、それは、視界に表記されるのである。
勿論、初見のモンスターや、高レベルの場合などは???となるが。
背中に冷汗がドバドバと流れる。
レベル2ゴブリンは俺のサイドを抑えに来る、
レベル5のゴブリンは、脆弱な俺を見て笑っている。
「ギギッギ」絶対に逃がすなと命令しているに違いない。
持っている短剣でレベル2ゴブリンを切り付ける。
しかし、そもそも其のゴブリンとすら互角の戦いなのだ。
短剣を受けて、蹴りをはなってくる。
もう一匹のゴブリンが背中を襲う。
裏拳を放ち迎撃する。クリーンヒットで吹きとばす。
「くそ!」倒れたゴブリンにとびかかり、襲う。
だが、その時レベル5ゴブリンが俺を襲撃する。
おれの短剣は、レベル2のゴブリンの腹を貫通するが、レベル5ゴブリンの短剣は俺の肩を切り裂く。
「ぐっつ!」
これで階層が深ければ、短剣に毒が塗られていたりするが、さすがに低層階なのでそこはまだ大丈夫だった。
レベル2とレベル5に挟まれる。どうやっても逃がすつもりはないようだ。
肩の傷がうずく。
「ギッギギ。」
レベル5が挑発してくる。まさにほら来いよと言っているようだ。
後ろのレベル2が隙を伺う。
レベル5が攻撃をするため、腰だめで短剣を付きこんでくる。
俺はとっさに後ろに飛んでレベル2を捕まえる。ブスリ、脇腹をさされてしまうが、お構いなしに、前面に引っ張り出す。
レベル5の短剣はレベル2を突き刺した。
「グフ」レベル2がくぐもった声を出す。
レベル5は自分の部下を刺殺したが気にもしていない。迷宮産モンスターには仲間意識はないのだ。
それは、自然界の種族と決定的に違う。
弱っている俺を赤い瞳で睨み付けている。
すでに、レベル2の2匹は死亡している。
死ぬと、キラキラと砕け散っていく。
「ギギギゴ」何やら勝利宣言のレベル5ゴブリン。
やったぞ!といっているように見える。
俺は、肩と脇腹に傷を負っていた。脇腹の傷は深い。
出血がひどい、時間との勝負になる。
出血多量で意識を失えば、殺されることが確定する、かといって無謀な攻撃はさらに自分の死期を早めるだけである。
身長140センチ程度のレベル5が短剣を構える。
「ギギゴ」それは死ねと言っているように聞こえる。
座り込み加減の俺に、レベル5の短剣が降りかかる、
その時俺は、その手首を捕まえながら、後ろに倒れこむ。と同時に巴投げを打つ。
上下が逆転し、俺は短剣でレベル5の顔を突き刺そうとするが、ゴブリンの手は俺の両手を掴んで、そうはさせじを力が入る。
ゴブリンの生臭い息が俺にかかるが、そんな事を気にしている場合ではない。
「死ね」渾身の力を込めるが、すでに手負いの俺、特に脇腹の傷は深く出血が悪化するばかりである。
「死ね、死んでくれ」さらに渾身の力と体重をかける。
短剣がゴブリンの眉間に少し刺さる。
「ぐお~!」
剣先が徐々にゴブリンの眉間深くに突き刺さっていく。
「おりゃ~!」
「グギ!」という叫びとバキという貫通音。
顔面と頭蓋骨を短剣で貫通されたゴブリンは死んだ。
だが、すでに無理な力技で相当の出血を強いられる俺。
意識がもうろうとしている俺は、徐々に意識が遠のいていくのがわかる。
そして、ついに意識はそこで途切れた。
次のゴブリンが来れば死亡。
スライムが来れば、溶かされて死亡。
時間がたてば出血多量で死亡。
死亡フラグが回収しきれないくらいだな。
脇腹から血が広がっていく。
しかし、薄暗い迷宮では、赤くは見えない。
黒い水たまりができているように見えるだけなのだ。
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