第7話

「オリヴィア! もう大丈夫なの?」


少し寝たら元気になり、無事登校出来た。登校したらすぐにエドワードに声をかけられたわ。彼は最近お父様の跡を継ぐ為に城で働いている事が多い。


わたくしも、ずっと城で働いているから学園に来るのは久しぶりだ。そうだわ、倒れていた間の仕事をどうするか相談しないと。


「エドワード、倒れてしまってごめんなさい。お仕事、溜まってるわよね? 今日の授業が終わったらすぐに処理するから」


たくさん寝たし、今夜は徹夜でも大丈夫。明日はお休みだから、たくさん働けるわ。


「オリヴィアの仕事は全部僕が処理したよ。だから大丈夫。僕もちゃんと学園に通う。オリヴィアも学園を優先してくれって父上が言ってた。そもそも、僕らは学生なんだ。理事長先生が城に働きかけてくれて、僕らが仕事をするのは休日だけにして貰った。人材は足りてないけど、学生で優秀な人達にも手伝って貰う事にしたからなんとかなるよ。ウィルが将来の為に休日に仕事をさせてくれって言い出したのがきっかけで、何人もの生徒が手を挙げてくれた。理事長先生がふるいにかけてくれたから、みんな優秀だ。僕らだけで抱え込まなくて良くなったよ。もちろん、機密事項には触らせないけど、それは僕もオリヴィアも同じでしょう?」


わたくし達は、まだ学生。だから仕事の手伝いと言っても重要な部分には触れない。わたくしは結婚すればすぐにでも王家の秘密に触れないといけないけど、今は何も知らない。


王家の秘密を知ってしまえば、わたくしはアイザックと結婚するしか生きる道はなくなる。


何度も何度も、仕事の為に王家の秘密を学べと言われたが、断って良かった。先生のおかげだ。


アイザックがわたくしに王家の秘密を教えると言ってきた時、たまたま理事長先生が通りかかって結婚してからじゃないと王家の秘密は教えてはいけないとアイザックを叱ってくれた。アイザックは言わなくなったけど、それからも王妃様や国王陛下から何度も勧められたわ。


王家の秘密を教える時は儀式をする。けど、わたくしが拒否すれば儀式は失敗するわ。一度だけ儀式をさせられたけど、絶対に嫌だと拒否をした。お父様がわたくしを殴って無理矢理儀式を進めようとしたけど、マーティンが助けてくれた。その後駆けつけた先生やエドワード、宰相様達の説得で儀式は取りやめになったわ。


先生の説得で国王陛下は納得して下さった。学園の理事長先生の意見は王家も無視できない。学園に在籍している間はまだ子ども。子どもを唆して働かせるなと厳しく言って下さった。先生の働きかけで宰相様を始め文官の方達も反対してくれたので、わたくしは結婚するまで王家の秘密を知る事はない。


お父様には殴られたけど、拒否して良かったわ。お父様は、わたくしが王家の秘密を知れば確実に王妃になれると思ってる。けど、秘密を知ってしまえばロザリーとアイザックの邪魔者であるわたくしは殺されるしかなくなる。


……もしかして、ゲームでエドワードルートだと必ず処刑されるのって……わたくしが王家の秘密を知ってるから?


ゲームでのエドワードは、わたくしが早く王家の秘密を知って仕事をしてくれる事を望んでいた。今のエドワードは、そんな事言わない。むしろ心配してくれている。


先生やエドワード、マーティンや宰相様が助けて下さらなければ……わたくしは死んでいた……?


ゾッとする。思わず震えてしまった。わたくしの様子がおかしいと気が付いたエドワードが心配してくれて、わたくしを医務室へ連れて行ってくれた。


途中でアイザックとマーティンにも会ったわ。マーティンは青い顔をしているわたくしを心配してくれた。アイザックは……ひとこと労いを言ったらすぐにロザリーを見つけて行ってしまった。


婚約者として体面を整えようと思ったのか、マーティンにわたくしを医務室に送るよう命じたけど……わたくしを見る目は冷たかった。


マーティンはため息を吐き、エドワードは怒っていた。わたくしはアイザックへの愛情が急激に冷めていったわ。何で今までこんなクズが好きだったんだろう。


わたくしの初恋は、この瞬間に完全に終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る