小ネタ『カード交換』 ジーン・リードの場合
――切り札と自分が取る枚数を決めて、ナポレオンになると、余りカードを見て自分のカードと交換することができる。
――余りカードの中に副官のカードが入っていることもあるので、余りカードが負けに繋がることもある。
――余りカードと交換した時点で、切り札を変えたい場合には、ナポレオンはその柄より強い柄のカードか、もしくは枚数を増やして切り札を変えることができる。
――例)「クラブで十三枚」→「ダイヤで十三枚」、「スペードで十三枚」→「クラブで十四枚」など。
三歳のラヴィーナは時に暴君だった。
ふんわりとした生地で作られたクタクタのウサギちゃんのぬいぐるみの耳を持って振り回すラヴィーナに、色違いの同じ生地で作られたクタクタのクマちゃんのぬいぐるみを持って、ジーンは語り掛ける。
「ラヴィーナ、それは、私のウサちゃんなんだ。ラヴィーナのは、こっちのクマちゃんだろう?」
「や! ラヴィ、うたたんがいーの!」
ぷいっと顔を背けるラヴィーナに、ジーンはクマちゃんのぬいぐるみを差し出した。小さな手で払われてしまい、ジーンは心なしかしょんぼりとクマちゃんのぬいぐるみを拾った。
ジーンの家は、ツグミがアジア系なのもあるが、基本的に玄関で靴を脱いで、フローリングに素足の生活なので、床に落ちたからといってぬいぐるみがひどく汚れたりはしない。ただ、くたくたなので、床に落ちるととても哀愁漂う雰囲気になってしまう。
「ツグミがくれたものなんだ……ラヴィーナ、返してくれないか?」
かすれた静かな声に、僅かに悲しみを滲ませるジーンに、ラヴィーナは緑の目を向けた。
「やなのー。うたたん、かーいいのー」
可愛いと主張する割には、耳を掴んで振り回しているラヴィーナに、ジーンはクマちゃんのぬいぐるみを抱いて、仕方なくソファに座った。ちらちらと部屋から様子を伺っていたレオーネが、ラヴィーナに大股で近寄る。
「ラヴィ! ダメでしょ、ジーンの大事なものに勝手に触ったら! ラヴィのクマさん、ジーンがもらっちゃうよ?」
「いやー! レオ、きあいー! あっちいってー!」
ぎゅっとウサギちゃんのぬいぐるみを抱きしめてこれ見よがしに大声で泣き出すラヴィーナに、ジーンがレオーネに緩々と首を左右に振った。
「レオーネ、私が手の届くところに置いておいたのが悪い」
「ジーン、ちゃんとダメなことはダメって言わないと、ラヴィーナ、分からなくなっちゃうよ」
二年間施設にいたレオーネは、ジーンよりもずっと躾に厳しいようだった。
「まだ、ラヴィーナは小さい」
「でも、大事なものなんでしょう?ツグミからもらった大事なものを、乱暴に扱われたら、それは怒らないと」
「怒る……」
難しいことのように考え込んでしまったジーンに、レオーネが号泣しているラヴィーナにきっぱりと告げる。
「ちゃんと返さないなら、僕がラヴィのおやつもらっちゃうよ!」
「いーやー!!!! ごめんしゃい! ジン、ごめんしゃい!」
悲鳴を上げて、素早くジーンの抱いているクマちゃんのぬいぐるみと、ウサギちゃんのぬいぐるみを取り換えるラヴィーナ。
「どれだけ、食いしん坊なの……」
苦笑したレオーネに、ジーンはウサギちゃんのぬいぐるみを抱いて、僅かに眼元を笑ませた。
夜勤から戻ったツグミが、レオーネからその話を聞いて、「次からはラヴィーナとジーンの分、二つ買ってこよう」と可愛さに悶えたというのは、別の話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます