第3話
私はそのまま王子と王女様に連れられ秘密の通路を通って王宮内に入る。
「私にこんな通路を教えていいのですか?」
「大丈夫。むしろ将来王妃になるからこういった通路を知らないと。」
ええ~~~。私、王妃になるの確定ですか!
私が青くなってると、王女様が肩をポンと叩いてきた。
「お兄様は一度言ったら聞かないから諦めてね。ちゃんと王妃になれる様に色々教えてあげるわ。」
やっぱり王妃になるの確定じゃないですか~~~~~~!!
私たちは王宮内の不寝番の衛兵が立っている部屋の前に来た。
「陛下は既に御休みになられ「父上に緊急の話がある。通せ。」」
そう言って、王子は懐から鍵束をだし、その中の一つの鍵で扉を開けてしまった。って、《陛下》や《父上》ってまさか……。
衛兵が止める間もなく部屋に侵入した私たちは、寝室まで入り込んだ。そして、おもむろに王子がベッドで眠る人物を起こそうと揺さぶる。
「父上、起きてください。緊急の用件です。」
「……ん?なんじゃ?」
寝ていた人物が目を覚ます。
「父上、緊急の用件がございましたので、起きてもらいました。」
「ん?クリスか。緊急の用とはなんじゃ?それにロクアと……どちら様かな?」
「はい、カルネシア伯爵のご令嬢のアニスです。俺、彼女と結婚します。あと、ついでにメリーシャが今、フィルとベッドで一緒なので、フィルの継承権の剥奪と、メリーシャとの婚約破棄をお願いします。」
「お、おう。」
「あ、あと、婚約破棄はちょうど半月後にフィルの誕生日パーティーがあるので、そのタイミングでやります。」
「そ、そうか。して、そちらの娘を代わりの婚約者とすると言うわけか。で、その娘は伯爵令嬢だと言ったか。なら、かろうじて爵位は足りてるか。根回しの方は?」
「ま、問題ないですね。一応庶子ではありますが、カルネシア伯爵はこの件は断れないでしょうし、第二王子派も文句を言えませんね。だって、俺を狙ってきた暗殺者ですから。」
「なっ!」
国王陛下が驚く。そりゃそうだ、だって自分を殺しに来た女を嫁にするなんて馬鹿げているからね。
「ふむ、メリットよりデメリットの方が大きいような気がするのだが。」
「いえ、そうとも言えないですね。なぜなら、彼女が暗殺者と言ってしまえば、第二王子派が暗殺者を送り込むような集団となってしまい良くて貴族籍剥奪、悪くて一族全員の処刑。フィルも良くて無期限謹慎、悪くて処刑。どっちにしろ派閥は壊滅でしょうね。なので彼らは彼女が暗殺者であることを黙っているしかないのですよ。で、フィルに継承権の剥奪をしても王子であることは変わらないので、万が一俺を含めた他の後継者が何らかの形で全滅したら棚ぼた的に王位が回っては来る。それに、次の国王に世継ぎができなかったら王位を継承するのはフィルの家系になる。首の皮一枚残るのと、希望がなくなるのでは、どちらを選択するか火を見るより明らかです。まあ、馬鹿ばっかだったらやらかすことはあり得ますが、大丈夫でしょう。」
「では、他の派閥に情報を売り渡す可能性は?」
「蜥蜴の尻尾切りにしかならないけど、一応あり得ますね。ですが、先に国王が問題なしと宣言されたら関係ないですね。もし、そんなことを言えば国王に対する不敬罪でしょっぴけます。」
「確かに、そうなるな。ならば、ワシが認めなかったら?」
「そうですね、俺は彼女と野に下りロクアート以外の弟妹たちを暗殺して、ロクアートを女王にさせます。しばらくは国が荒れますが、粛清していけば問題ないでしょう。むしろ俺はそっちの方がいいな。」
……結局、私はこの人から逃げられないのね。そう思いふらっと倒れそうになったところを王子が支えた。
「それは困るな。まあ、他の3人の王子よりちゃんと根回しするお前の方が何倍もましなんだが。いや、一番ましなのはロクアかもしれんが……。」
今の王子ってみんな評価が低いの!?
「いえ、実際のところ単純な御輿にするなら誰でもいいんですよ。ただ、国の将来を考えると他3人がアホほど低いだけですね。」
「アホほどって。」
「そりゃ、戦争馬鹿と魔法馬鹿と貴族馬鹿ですよ。一番多い庶民に反感買うだけです。」
「ぷっ。」
思わず笑ってしまった。
「しかも、操りやすいから御輿としては完璧ですね。戦争馬鹿は戦費、魔法馬鹿は研究費の名目で色々できますし。」
「じゃあ、貴族は自分達の利益を守るため、派閥争いをしてるのですか?」
「そう言うことね。まあ、お兄様は根回しをして、かつ他の人が手柄を得るように仕向けるから、飄々としてつかみどころがなく、それでいて成績も真ん中あたりをうろうろしているから貴族はまず寄り付かないわね。」
「ま、俺はあえて成績を真ん中あたりにしてるんだけどね。目立ちたくないし。」
「第一王子だから今さらであろう。」
国王陛下が突っ込む。というか、私なんかがここにいるのが
「ちなみにこいつ、武術関係もなかなか強いんだが、これも隠してる。」
「だって、脳筋馬鹿とやりあうの疲れるんだから。だったらアニスといちゃこらしたい。」
私は殿下のセリフに顔を赤くする。殿下、ぶっちゃけすぎです。
「それほど気に入ったのか。」
「はい!」
食いぎみに肯定する殿下。
「ならば、婚約の破棄とクリスとカルネシア伯爵令嬢アニスの婚約を認める。アニス嬢、こんな息子だがよろしく頼まれてくれんか?じゃないと国が滅びる。」
「それって拒否は……。」
「すまんが、できんな。貴族の肩書きを得てしまったからには政略結婚をさせられると思って諦めてくれ、すまん。」
国王陛下から謝られた。じゃあ私、将来王妃にならなきゃいけないの?暗殺者なのに。
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