第15話 続きの構想を聞く
「アストブ国はケントが後継者となって、ヒネガとの戦争に邁進。レイカは、もちろん戦争反対。できればツァークにこの国を治めてほしいと願っている。彼女は婚約者となったライアに、相談を持ちかける。困ったのはライア。彼自身は純粋にレイカを好きなんだけど、彼の親や親類達は、そうは考えていない。出世コースに乗ったと思っている。だから、ライアも悩む訳。レイカの考えをアストブの偉いさんに伝えれば、さらなる出世は間違いなし」
「だけど、言いつけないのよね?」
「そのつもり。ライアは地下水路を利して、ツァークを脱出させる計画を実行に移し、成功。脱出後、ある程度の時間が経ってから、ツァークはアストブの新国王を宣言する。国民の指示はほぼ二分されて、混乱が現実のものになった。と言っても、戦力を見れば、コウティの方が圧倒的に有利。ツァークがいくら非戦を説いても、父親は当然、聞き入れない。力で叩き潰そうとする。ツァークは戦争に身を投じることを決意」
「あらら。レイカちゃん、かわいそ」
今度は非戦論者になるユキであった。
「そのことで、レイカはツァークに詰問する。と言っても、彼女は自由に出歩けない身だから、手紙を出すんだけど。ツァークはレイカを説得する。レイカがやっとのことで決意を固めかけたとき……手紙がアストブの者に見つかってしまった」
「げっ」
「関与した婚約者のライアは処刑され、レイカは完全な幽閉状態に置かれる」
「レイカの方は、殺されないのね?」
「うーん、実際はどうだったんだろう? 王族が身内を殺すなんてのは、割とあったはずなんだ。だけど、大っぴらに処刑という形では殺さない。事故とか暗殺とかに見せかける」
「だったら……。ううん、私としたら、レイカに死んでほしくないんだけど」
首を振りながら、ユキは言った。
「レイカは実の娘だから、コウティも殺せないと思う。実の息子だったら、まだ分からないけど」
「ツァークとは戦って、レイカは生かす……。何となく、分かる気がするわ」
「さてと、元に戻って……。ツァークはレイカの身の上に起こったことを知る。が、妹の生命は大丈夫と分かって、ほっと一安心。戦力増強を狙ったツァークは、ヒネガとの同盟を選択した」
「へえ! だけどさ、ヒネガ族は簡単には受け入れないよ。信用もしない」
また先回りするユキ。
「図星だよ。ここで何か、信頼関係を築けるエピソードを入れたいんだけど」
初めて、堂本はアイディアを求めるような言葉を口にした。
「ありがちなところだと、戦火にやられそうになったヒネガ族の子供を、身を呈してツァークが助ける、なんてのがあるけど」
自分でもいささか白けながら、ユキは言ってみた。返ってきたのは……。
「そういう安易なのは、ちょっと……。できれば、ポルティスに絡めたいんだ。ツァークがポルティスの味方と示せれば、ヒネガ一族にも信用の余地ができる」
「そう言えば、そのポルティスは? 反乱しないの?」
「ポルティスの方は、大将格と言っても、一兵士なんだからね。反乱を起こしたって、部下の兵みんながついて来てくれるとは限らない。だから、簡単には行動に出られない」
「なーる。で、ポルティスとツァークの話に戻るけど、やっぱり、最初の方で、二人が知り合いってことを書いとくしかないんじゃない? 二人して、理想の国家を話し合っているとか」
「王子と一介の将が話をするっていうのが、ちょっと引っかかる」
堂本は疑問を呈した。それを、ユキは気楽に流す。
「いいっていいって。親友にでもしとけば」
「……その線で行くしかないか」
メモ用紙に書き込む堂本。まだ、決心できたようではなさそうだったが。
「それから……ツァーク派とヒネガ族の同盟が、どうにか成立して」
「待って。ポルティスは放ったらかし?」
「これから言うことが、つながっているよ。ポルティスは今のとこ、忠実なる将を装っている。ツァークは、兵力としても、友人としても、ポルティスを仲間にしたい。キルティについては、言うまでもないよね。……で、同盟成立後、本格的に戦争状態に突入する。戦闘場面では、ポルティス以外の白の六騎士とかケント・ワルドーとかを出すことになるかな」
「六騎士の何人かは死ぬのかな」
「いや、戦闘では誰も死なない。もちろん、ケントもコウティも」
「えー? だったら、ヒネガ・ツァーク連合が負けっ放し?」
「『いい者』が負けると、だめかい?」
と、笑う堂本。ユキは、迷った風に口を尖らせてから、
「そうでもないけど、最後にはヒネガ族が勝ってくれなきゃ、ねえ」
と答えた。
「一応、そうするつもりだけどね。最後まで、ツァーク達とヒネガ族が円満で行くかどうかは、クエスチョンマークにしておこう」
「ああ、そういう引っ張り方もあるのね」
「まあ、自分でも決めかねている部分があるんだけど。それより話の続きだ。簡単に話すとか言って、すごく長くなっているな」
苦笑する堂本。喉の渇きを覚えたか、冷えた紅茶を呷った。
「長引く戦争。そんな最中、ある戦闘でのアストブの勝利は、アストブをかなり有利に導くものと言えた。それを祝したパーティが開かれ、白の六騎士全員が揃う。久しぶりの華やかな席で、誰もが酔っていた。その翌朝」
効果を出すためか、言葉を区切った堂本。ユキは固唾を呑んで、次の言葉を待つ。
「……白の中庭で、六つの遺体が発見された。六遺体とも、白の六騎士のシンボルである白い鎧を身に着けていた」
「ま、まさか、白の六騎士みんなが死んじゃったの?」
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