問答

 何故、今、私は私であるのだろうか。ふと、何処かに置いてきたはずの絶望感が足に絡みつく。

 答えは、常に明らかだった。私が私として生きる選択をしたからにほかならない。私が私であることを手放せずにいるからにほかならない。

 何故、生きることを選択したのだろう。何故、私は生を手放せずにいるのだろう。

 答えは頭の奥深く、或いは、腹の底、はたまた、心臓の裏側に沈んでいる。そうして私は、その深い深い身のうちになにものも存在していないことを知っている。

 私の中にはなにものもない。生を選択する由も、生を手放す力も、なにものも。

 足元には深淵。そこにあると知りながら、忘れたふりを続けている。けれど時折、深淵から吹く風が私に事実を知らしめる。

 私は、私の無力さ故に、なにものも持たず、なにものにもなれずに、ただただ生をすり減らしている。






20221022

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