野球(魂)

 1点差ながら勝利目前、プレーオフを賭けた最終戦。

 引き分けでも、今シーズンは終了する。1失点も許されない、最終回の裏。


 一軍初登板の俺がマウンドに立っていた。


 負傷者の発生で、二軍の俺に蜘蛛の糸がおり、乱打戦で俺以外のピッチャーは居なくなった。実力で勝ち取ったとは言えないが、幸運にも出番が来た。


 全力で投げる。

 ツーアウトまで持ち込むも1、3塁。


 バッターを追い込んで、乾坤一擲のインロー、僅かに低く外れたボール球をすくわれる。

 詰まった当たり、二塁守備のグラブに届か……ない。

 超前進守備のライトがファーストへの送球、間に合わない。


 この瞬間、相手チームのプレーオフ進出と、俺のチームの今シーズン終了が確定する。

 数万が集まるスタジアムは真っ二つだ。一方は爆ぜる様に盛り上がり、他方は消沈する。


 今シーズン終了の事実、相手チームの大歓声が仲間の頭をもたげさせてゆく。

 うなだれている仲間を横目に、俺はうつむき息を吐く。


 怒りを吐き出す為に、頭をクリアにやるべき事をヤル!


 上を向く、一軍やったらしっかりせいや!


「ツーアウトー!」


 俺は指を2本掲げて、天に咆哮する。

 返事はない。


「ツーアウトー!」


 繰り返す。


 キャッチャーが慌てて立ち上がり檄を飛ばす。


「ツーアウト、ラストやんぞー!」


 下を向いてる仲間が目覚める。

 声を掛け合い、全員が次のバッターに集中する。


 勝ちが無いから価値がない?

 ちがうね、俺はピッチャーだ。

 チームの全力で最後まで闘う。

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スポーツ観戦〜主人公目線で体験版〜 由兵衛(よしべえ) @you_hey_cool

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