第9話 また陽子のアイデァが閃いた

 コンビニエンスストア業界は商品を売るだけではなく、あらゆるサービスを提供して伸びて来た。チケット販売、役所の書類、支払い代行、運送業代行、銀行代行業務、おまけに冬場はおでんの販売、これをアルバイト従業員が担当するのだから業務は多忙である。そんな多忙な店舗に更なる仕事を増やすのも気が引ける。しかし売り上げを伸ばすには各店舗の売り上げが延びないと更なる成長がない。

張り切ってはいたが、いったい何があるかと考え込んだ。営業部は一日中デスクに座って仕事をしている訳ではない。因って外に飛び出すのも仕事のうちである。

数週間して陽子は色んなコンビ二を見て周った。共通しているのはたいがいの店舗は駐車場がある事だ。ただ都会のど真ん中は土地も高いし駐車場が無くても客はくるから問題台はない。陽子が目を付けたのは駐車場のスペースだ。平均して少なくても五台から七台は置ける。地方だと大型トラックも置けて三十台以上も置ける所もある。店舗の前に屋台小屋をおけば車一台ないし一台半のスペースがあれば充分だ。つまり小規模な居酒屋だ。客は酒と最低限ツマミがあればいい。仕事帰りにちょっと飲みたい客には受けるだろう。それに、おでんを置くのも良いと思った。元々冬場はコンビニでも出すから、それを回せば済む。これは奇抜なアイデァだ。企画書を書いても通るかどうか分からない。そこで四人同盟に意見を求めた。統子は以前の会社に復帰してバリバリ働いているようだ。千絵と桃子も仕事を見つけたらしく久し振り会う事になった。


「へぇー陽子は大手コンビニの本社勤めとは凄いわね」

「たまたまよ。ちょっとしたアイデアが受けてね。店長が本社に推薦してくれたのよ。せっかく本社に入れたのだからと、思いついた企画がこれよ」

陽子は思案中の企画書を見せた。㊙と書いてあるがこの三人は信頼できる友人、極秘書類を見せる代わり意見を求めた。

「なんだってコンビ二で居酒屋をやるって」

三人は企画書を見るなり笑った。だが少しすると統子が面白いかもと言ってくれた。

「良く考えると面白いかも。勿論本格的な居酒屋には及ばないけど。小さなスペースでやっている店は沢山あるじゃない」

「そうそう例えば新橋や有楽町のガード下など五-六人しか座れないけど繁盛しているじゃない」

最後にはみんなが賛同してくれた。

「流石ね、私がイメージした事を思い浮かべるなんて。何処と言う訳じゃないけど以外とコンビ二の近くには飲み屋が少ないのよね。ちょっと飲みたいなと思うに人には受けるかも」

気を良くした陽子は、何回も練り直して企画書を提出した。

最初は居酒屋風と言ったがコンビニとしては似合わない。そこで洋風的な洒落た感じに変更を加えてある。企画書を読んだ課長はニヤリとした。彼女のアイデアは突拍子もない事を考え出すと聞かされていたが今回も驚きの企画であった。勿論、人出を増やさなければならないが、せいぜい一人でいけるだろう。採算が取れれば問題ない。おでんやツマミを出す酒を提供するだけなら誰にでも出来る。ツマミが足りなければ目の前のコンビ二で買えるし一石二鳥だ。同じ店だから持ち込みにはならない。最低限でも酒を提供し飲む場所を提供すれば商売は成り立ちわけだ。


つづく



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